花王は、2016年度を新中期経営計画「K20」策定に向けた準備の年と位置づけ、これまでの振り返りを行いつつ、今後の方向性を練り上げてきた。昨年12月には2030年までに達成したい姿として、売上高2.5兆円(海外1兆円)、営業利益率17%、ROE20%という数値を示しつつ、中期経営計画「K20」を発表した。
「自ら変わり、変化を先導しない限り、この高い目標は達成できない」と語る澤田道隆社長に昨年度の回顧と今年度の基本方針を中心にインタビューした。
16年は変化が起こる前に
自ら先手を打つことで成果
――まずは、昨年1年間を振り返っていただけますか。
澤田 2016年は、新中期経営計画「K20」策定に向けた準備の年ということでスタートしました。
前3カ年計画「K15」では、全ての目標を達成して無事終了することができましたが、全てがうまく行った訳ではなかったので、これまでの振り返りを行いつつ、今後の方向性を練り上げていきました。そして「K20」を予定通りに公表しました。
一方で、ビジネスは日々動いており、自らの強みを活かしながら業績をしっかり伸ばすことも重要でしたので、公表数値の達成に向けて全社を挙げて取り組みました。
1年という非常に限られた時間の中で、ビジネスを進め、振り返りも行い、「K20」の準備もしないといけないということで慌しかったですが、一言でいうと、充実して過ごすことができました。
事業で最も苦労したのは、メリーズの進め方と乱高下の激しいインバウンドへの対応でした。
メリーズについては、3年ほど前から中国の並行輸入業者の動きが活発になり、結果的に日本の店頭において品薄状態を招いてしまったため、2014年頃から供給責任を果たすための3つの対策に乗り出しました。
1つ目のステップとして、2014年春に酒田工場内にベビー用紙おむつ「メリーズ」の工場を新設するなど、供給責任を果たすための大増産を行いました。それでも収束しないことを見越して、2つ目のステップとして、販売改革を行いました。花王(中国)への輸出強化に加え、花王が自ら越境ECに乗り出したという事実は並行輸入業者に相当なインパクトを与えられると判断し、15年秋に「変化が起こる前に、自ら先手を打つ」ということで越境ECに参入しました。
3つ目のステップとして、先の2つのステップが成果を上げた段階で、品薄により低下していた国内シェアを回復するためのマーケティングに乗り出しました。また、設備増強により余力も生まれましたので、今後は未進出国にもメリーズを展開していく考えです。
当初、メリーズの3ステップは、じっくり進める予定でしたが、自分たちの予想を先取りする形で変化が起こってしまい、極めて短期間で3ステップをこなさないといけない事態に追い込まれました。しかし、最終的に自分たちのイメージ通りに推移できたのは、我々が先に変化を仕掛けたからでした。