花王メイクアップ研究所は、ファンデーションを塗布した肌の「硬さ」に着目し、これがファンデーションを塗布した肌のネガティブな「肌感覚」に影響を与える可能性があることを見出し、特に塗布肌の硬さと「閉塞感」には、高い相関があることを突き止めた。同研究内容の一部は、第84回SCCJ研究討論会(2019年7月18日、大阪府)にて発表した。
化粧品を使うとき、使用者は、さまざまな場面でその製品を評価しており、たとえば、「仕上がりの見た目」「塗布時や塗布後の剤や肌の触感(感触)」「つっぱり感」など、手ではなく、塗布した後の肌で感じている感覚(肌感覚)も、製品の好ましさに影響を与えていることがわかっている。
そのうち、乳化系(リキッド・クリーム状)ファンデーションを使用した際のネガティブな「肌感覚」として、しばしば「乾燥感」「閉塞感」という言葉が使われる。しかし、こういったネガティブな「肌感覚」が、具体的にファンデーションのどのような物性と関連するのかは明らかになっていなかった。
そこで今回は、乳化系ファンデーションを塗布した後に、一部の成分が揮発して膜自体が硬くなるという現象に着目し、ファンデーション塗膜の硬さが顔の肌の上でも知覚され、「肌感覚」に影響を及ぼしている可能性を検証した。
実験では、6種類の乳化系ファンデーションを用意し、20~50代の女性55名を対象に、スキンケア直後、ファンデーション塗布90分後の頬の肌の硬さを、タクタイルセンサーを用いて計測した。
さらに、ファンデーション塗布90分後、6種のファンデーションそれぞれについて、ネガティブな肌感覚「乾燥感」「閉塞感」「硬い感じ」「つっぱる」「膜感」「ごわごわする」を感じる程度を、5段階で評価してもらった。
その結果、ファンデーションを塗布して90分後の肌は、試験に用いた6種類すべて、スキンケア直後よりも硬くなっていた。さらに、ファンデーション塗布後の肌の硬さは、ファンデーションの種類によって異なることを確認した。
続いて、6種のファンデーションの塗布90分後に肌が硬くなった程度と、ネガティブな「肌感覚」との関係を確認した結果、塗布肌が硬くなっているほど、ネガティブな肌感覚を感じているという関係性が示され、中でも「閉塞感」については、有意に高い相関(r=-0.89)があった。これにより、ファンデーション塗布後のネガティブな「肌感覚」に、塗布肌の硬さが影響を与える可能性があることが示された。
同社では、今回の試験においてファンデーション塗布肌の硬さが、ネガティブな「肌感覚」に影響する因子の1つであることが示されたことから、ファンデーション塗布肌の硬さを考慮することが、心地よいファンデーション開発の指針になり得ると考え、心地よいファンデーションに必要な要素の探索を進めていく。