花王、肌あれを短期間で改善させる製剤技術を開発

粧業日報 2019年8月27日号 4ページ

花王、肌あれを短期間で改善させる製剤技術を開発
 花王のスキンケア研究所、マテリアルサイエンス研究所、解析科学研究所は、乾燥による肌あれに悩む人に向けた研究を進める中、「高含水α-ゲル」と独自のポリマー(OXP-SI)を効果的に組み合わせることで、微小鱗屑(りんせつ)部位に選択的に吸着して、角層を早期になめらかな状態に改善させる新製剤を開発した。

 同研究内容は、「日本油化学会第58回年会(2019年9月24~26日、東京都)」「OKINAWA COLLOIDS f2019(2019年11月3~8日、沖縄県)」にて発表する。

 日本人女性の多くが、肌の乾燥に悩んでおり、近年、その割合は増加傾向にある。同社が乾燥悩みを持つ有職女性の肌実態・意識を調べたところ、90%以上の人の肌表面に微小な鱗屑があることを確認した。

 同社では、健康的でなめらかな肌の表面は角層の細胞が適度に接着され精緻に配列している一方、角層がはがれてめくれあがった微小鱗屑がある肌では水分蒸散が加速したり、外からの刺激を受けやすくなったりしていることから、このような乾燥による肌あれ悩みに対し、保湿ケアとして、角層細胞間脂質を模した高い含水構造からなる「高含水α-ゲル」を開発し、さまざまなスキンケアに応用してきた。今回、「有職女性は、できるなら3日~1週間という短い期間でスキンケア効果を実感したいと思っている」(2018年3月同社調べ 有職女性20~50代、n=79)との調査結果もあることから、肌を短期間になめらかな状態に整える技術開発に取り組んだ。

 研究では、肌最表面のはがれかけた角層を物理的に接着するというアプローチを検討し、ポリマーの持つ多点接着という性質に着目。数多くのポリマーのスクリーニングにより、柔軟な膜を形成し、かつ「高含水α-ゲル」との組み合わせが可能な独自のOXP-SI(Oxazoline modified silicone)ポリマーを見出した。

 さらに、それらの添加方法などの検討を繰り返し、新しい製剤技術を開発した。

 この製剤の特徴を確認するため、OXP-SIポリマーに蛍光色素をつけて、顕微鏡で観察したところ、従来の方法では、ポリマーが水相に分散して存在している一方、新製剤では、ポリマーが「α-ゲル」の周囲に集まったユニークな複合体となって、水相に分散していることが確認された。

 また、新製剤を肌に塗布した後の状態を蛍光顕微鏡で観察した結果、新製剤塗布後の肌で、ポリマーと複合化した「高含水α-ゲル」が微小鱗屑部位に選択的に吸着する様子が確認された。

 さらに、7名の男女の前腕内側部位1カ所にあれ肌処理をした「モデルあれ肌」に、新製剤を1日2回塗布し、肌表面の状態を観察したところ、新製剤を塗布したモデルあれ肌は、連用前に対して2日目から有意に改善していることを確認した。

 これらの様子から、吸着した複合体が鱗屑を接着し、擬似的に健常な状態を維持させることで、肌表面が早期になめらかに改善したと考えられるという。

 この製剤を使用すると、肌表面がなめらかになることで、乾燥だけでなく、化粧のりもよくなることも期待されることから、今回の検討で得られた知見をもとに、今後のスキンケア技術開発につなげていく。
ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 花王、肌あれを短期間で改善させる製剤技術を開発

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop