花王、日本の住環境における菌の実態調査

粧業日報 2019年10月10日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 掃除用キッチンスポンジや冷蔵庫野菜室に菌叢の種多様性を確認
花王、日本の住環境における菌の実態調査
 花王安全性科学研究所は、日本の住環境における微生物分布の実態を、一般家庭を対象にして調査した。その結果、菌数としてはシンク排水口やキッチンスポンジ(掃除用)、蛇口付け根に多いことがわかった。

 また、菌叢(菌の集団)の種多様性は、キッチンスポンジ(掃除用)と冷蔵庫野菜室で顕著に高いこと、特に冷蔵庫野菜室は病原菌を多く含む腸内細菌科が多く、それらは野菜に付着した土由来である可能性が示唆された。

 なお、今回の調査内容は、第46回日本防菌防黴学会(2019年9月26日・豊中市)で発表している。

 家庭内のどこにどのような種の菌がどのくらいの数いるかといった微生物分布の実態を正しく知ることは、衛生状態の確認や衛生製品開発において大変重要で、衛生状態の確認を目的として微生物分布の実態を知る方法はまちまちだが、比較的信頼性が高いと思われる評価指標としては、「菌数」「菌叢の種多様性」「病原菌存在比率」の3つが挙げられる。

 「菌数」は単純に生菌の数、「菌叢の種多様性」は菌の種類の多様さ、「病原菌存在比率」は菌の中でも特に病原性が知られる種を含む菌の割合について測定するもので、同社では、これらを総合して評価することにより、一般家庭における菌の存在状況と、清掃習慣、住居構造、家族構成等との関係性の見極めを行うことができると考えた。

 同社が一般家庭を対象に実施した実態調査(90の家庭を対象に合計1630カ所の菌を調査、2018年8~10月実施)では、さまざまな家庭を対象に、各家庭に調査員が訪問し、菌による汚染実態と生活習慣等との関係性に関して、網羅的な解析を行い、調査対象として調理台、キッチン蛇口付け根など最大24カ所について、菌を採取し、解析を行った。

 まず、各家庭の菌数を比べると、特にキッチンではキッチンスポンジやシンク排水口、蛇口付け根といった場所においてほとんどの家庭で菌数が多いことがわかった。また、テーブル用台ふきんでは、ダイニングテーブルで見られなかったような極めて多い菌数(106<CFU/10mL)が90家庭中の9家庭で検出された。さらに、キッチンやダイニングの菌数はトイレ床の菌数と同等以上であることがわかった。

 菌叢の種多様性については、網羅解析(メタ16S解析)の結果から考察した。菌の種多様性が高いほど値が大きくなる指標値を用いて家庭内の場所ごとの種多様性を比較したところ、キッチンスポンジ(掃除用)と冷蔵庫野菜室で種多様性が高かったことから、これらの場所が多様な菌が増えやすい、すなわち衛生管理上注意を要する場所であることが示唆された。

 病原菌存在比率を把握すべく、病原菌を多く含む腸内細菌科の家庭内分布を調べた。その結果、冷蔵庫野菜室とシンク排水口で、腸内細菌科の存在比率が高いことがわかった。

 これにより、家庭内の衛生管理には、冷蔵庫野菜室とシンク排水口が重要であることが示唆された。野菜室の腸内細菌科の割合が高い理由は、野菜に付着した土に由来する可能性が考えられるという。
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