資生堂、脳血流反応測定を用いた使用感の評価法を開発

粧業日報 2019年10月29日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 化粧品塗布中の使い心地評価は価値判断と相関することを発見
資生堂、脳血流反応測定を用いた使用感の評価法を開発
 資生堂は、脳血流反応を測定する技術「fNIRS」(機能的近赤外分光法、fNIRS=functional Near-Infrared Spectroscopy)を活用し、リアルタイムの測定を通じて顧客が好む最適な使用感を客観的に評価する新たな手法を開発した。

 一般的に化粧品開発では、顧客による価値評価や使い心地の評価を行う場合、アンケートやインタビューなど化粧品塗布後に評価する手法を用いるが、今回開発した新たな手法では、脳血流反応をリアルタイムで測定するため、塗布中に感じていることを可視化することが可能となった。今後、この評価法を商品の開発に活用していく。

 なお、同研究成果(中央大学との共同研究)の一部は「Applying Neuroscience to Business」(9月26~28日、横浜)にて発表している。

 研究では、日常的に口紅を使用している一般女性30名に6種類の柔らかさの異なる口紅のサンプルを使用してもらい、塗布中の脳血流反応を測定した。この結果、使用感が柔らかすぎる、または硬すぎるといったように、期待する使用感と異なる場合は脳の右下前頭回(IFG)部位の脳血流反応が有意に高まる一方で、適度な使用感が得られた場合には他のサンプルと比較してIFG部位が反応しないことを発見した。この研究結果から、脳血流反応をリアルタイムで測定することによって化粧品の使用感を評価することが可能となった。

 さらに、適度な使用感を感じる場合には、WTP(商品やサービスに対してどのくらいの金額を支払いたいかの最大金額、WTP=Willingness To Pay)の値が上昇し、化粧品の価値判断を示す右背外側前頭前野(DLPFC)の脳血流反応も有意に高くなることが示された。このことから、化粧品塗布中の使い心地評価は価値判断と相関することが示唆された。

 同社ではこれまでに、人が価値判断を行う際に重要であるとされる右背外側前頭前野(DLPFC)の脳血流反応と、行動経済学などにおいて商品やサービスへの支払い意思額の指標に用いられるWTPの値に相関性を発見しており、今回の研究では、日常的に化粧品を使用している日本語以外を母国語とする女性25名に、使用感の異なる6種類の口紅を使用してもらい、塗布中の脳血流反応をリアルタイムで測定するとともに、WTPによる価値づけを行った。

 この結果を日本人女性が口紅を使用した時の結果と比較したところ、WTPと脳血流反応測定結果に同様な傾向が認められることを見出した。

 これにより、脳血流反応を観察することによる顧客の価値判断評価において、使用する言語を問わず同様の結果が得られることが示唆された。

 同社では、今回得られた新たな知見を従来の化粧品評価と組み合わせることで、顧客がより価値を感じる最適な使い心地の化粧品の開発を目指していく。
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