小林製薬は、日本パーカライジングと国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(略称=JAXA)とともに宇宙船内を抗菌加工する技術の共同研究開発を3月より開始した。
研究名称は「シランカップリング技術を活かした抗菌剤固着技術の研究」で、より衛生的に長期滞在できる宇宙船内環境の実現、有人宇宙活動での活用を目指すという。
長期の宇宙滞在は、免疫力の低下につながることから、健常な状態では感染症の原因とならない弱い菌でも宇宙飛行士にとっては大きなリスクとなり得る。
一方、宇宙船内には宇宙飛行士由来を含む地上由来の微生物が存在するため、これら微生物の増殖を適切に制御して宇宙飛行士の感染症を予防する必要がある。
JAXAでは、この感染予防に関して、将来の有人宇宙活動で必要となる技術ギャップの1つに設定しており、今回の共同研究に至った。
小林製薬は、トイレ用芳香洗浄剤など日用品の開発を通して、様々な菌の制御方法や評価技術の研究を積み重ねている。
また、様々な素材を抗菌加工する技術の基礎研究も進めており、18年からは抗菌・抗カビ加工のニーズを抱える産業に、持続性抗菌剤KOBA-GUARD(コバガード)の提供も行っている。
「コバガード」は、今回の共同研究で着目している「シランカップリング技術」を活用しており、アパレル製品やイ草製品などに使用されている。
「シランカップリング技術」とは、自動車や建材などの表面加工に活用されている固着技術のことで、表面処理剤トップメーカーである日本パーカライジングは、この技術の研究開発を長年行っており、様々な分野で製品に応用している。
今回の共同研究「シランカップリング技術を活かした抗菌剤固着技術の研究」では、国際宇宙ステーションから検出された微生物の中で、感染症につながるリスクが高い微生物の増殖を制御できる抗菌加工技術の開発を行う。
同社は抗菌成分の選定、抗菌性能評価を担当する。日本パーカライジングは固定化技術の開発、JAXAは宇宙船搭載に必要となる特性評価を担当する。
期間は20年3月1日から22年2月末までの3年間で、将来的な宇宙船内での活用を目指し、「対象となる多様な微生物に抗菌効果を示す」「宇宙船内に使用される素材に抗菌成分を強力に固着できる」「宇宙船内の安全性基準を満たす」という3つの技術開発をミッションとしている。
共同研究で開発した基礎技術は、地上環境での実証実験を通して、宇宙空間での検証、さらには宇宙船内への搭載を目指す。
また、医療・介護施設の衛生管理など地上における社会的課題の解決にも応用可能性を見出していく。