アンチエイジング、エクソソームや独自培養技術を紹介した講演が盛況

C&T 2020年3月16日号 32ページ

アンチエイジング、エクソソームや独自培養技術を紹介した講演が盛況
 日本におけるヒト幹細胞培養液のパイオニアであるアンチエイジング社は、ヒト幹細胞培養液をはじめ、細胞間の情報伝達に関与する「エクソソーム」の実験データなどを紹介した。出展ブースには多くの来場者が訪れたほか、会場内で開催した原料セミナーには立ち見客が出るほどの聴講者が集まり、盛況ぶりを見せた。

 2012年に日本ではじめてヒト幹細胞培養液を展開した同社は、現在7種類をラインナップに取り揃え、ヒト幹細胞培養液の専門原料メーカーとして顧客の要望に柔軟に対応できる体制を整えている。

 「ヒト幹細胞培養液の新しいエビデンス」と題した原料セミナーには、代表取締役社長の牛島美樹氏とマテリアル事業部部長の藤田英人氏が登壇し、同社のヒト幹細胞培養液「Remy Stem(レミーステム)」が含有しているエクソソームの実験データや独自の培養技術について紹介した。

 再生医療から生まれたヒト幹細胞培養液は、サイトカインや酵素、タンパク質などの生理活性物質が豊富に含まれており、化粧品に配合すると低下した細胞の活性を呼び覚ます賦活剤としての効果を発揮する。

 ラインナップに揃えるRemy Stemは、これまでの研究において肌の抗老化作用や美白作用など様々な効果が確認されている。こうした効果は、Remy Stemに豊富に含まれる「エクソソーム」が関与している。

 エクソソームは、多様なタンパク質や脂質、核酸を包含しており、表面に有するタンパク質が必要な細胞の受容体と結合する特性を持つほか、体内移動中に酸素で分解されることや免疫系細胞に除去されることがないため、体内に長く残ることができるという。さらに、エクソソームにはアンチエイジングに有用な幅広い効果が確認されている。

 線維芽細胞を用いた実験では、培養時にエクソソームを加えると細胞の増殖が有意に見られた。増殖した線維芽細胞はコラーゲン生成機能を有することから、エクソソームにはコラーゲン生成による抗シワ効果が示唆されている。

 表皮を形成する上皮細胞の1つであるケラチノサイトの増殖評価において、通常の培養と比較し、エクソソームを添加した培地では、ウシ血清を添加した培地と同等レベルの細胞増殖が見られた。この結果から、エクソソームはケラチノサイトの増殖を促し、肌のバリア機能を強化することが示唆されている。

 さらに、ケラチノサイトの培養時に二酸化炭素を操作し表皮が創傷した状態を作りだした実験では、エクソソームを配合した無血清培地のケラチノサイトが血清培地と比較して有意に移動・集結し、配合濃度に比例して移動速度が増加した。この結果は、エクソソームの創傷治癒効果を示している。

 「こうした効果は、エクソソームが豊富に含有されるRemy Stemでも同様に確認されていることから、『ヒト幹細胞培養液の主役の1つはエクソソーム』といえるだろう」(藤田氏)

 このほか、エクソソームにはさらなる可能性が期待されている。抗老化作用の研究で、老化の指標となる酵素「SA-βガラクトシターゼ」の分泌が見られた細胞にRemy Stemを添加したところ、酵素が減少し老化状態の改善効果が示された。同社がこの効果に関与するRemy Stem内の成分を調べたところ、エクソソームに含まれるマイクロRNAが抗老化作用を発現していることが確認された。

 さらに、抗酸化効果に関する研究において、ケラチノサイトの培養時に過酸化水素を入れると細胞の死滅が見られた一方、エクソソームを処理した後に過酸化水素を入れた培地では細胞の死滅率が下がった。この結果は、エクソソームが分泌する創傷治癒の伝達物質が過酸化水素を抑制したと考えられる。

 同社はこのほど、新原料としてエクソソームにRemy Stemのリポソームを融合させた「Remy EV」を開発した。

 同原料は、エクソソームを融合させることによって生体内利用率を飛躍的に高めたほか、表面にリガンドを有するため目的となる細胞に着実に伝達できる機能を発揮する。

 同社が取り扱うヒト幹細胞培養液は、化粧品としての機能を引き出し、安全性に考慮した再生医療と全く異なる独自の幹細胞の培養法によって製造されている。

 再生医療では、体内から取り出した生体幹細胞の増殖を促すための培養を行う一方、化粧品に配合するヒト幹細胞培養液で増殖を促すと有用な成分を含む成長因子の発現が鈍化する。そのため、化粧品原料では増殖させずに多くの成長因子を発現させることが重要となる。

 より多くの成長因子を発現させるため、同社は一般的に行われるフラスコを用いた培養ではなく、円柱型のローリングボトル方式を採用している。ローリングボトルの内側壁面に幹細胞を付着させ、様々な刺激を与えることで有効成分の効率的な分泌を促すこの手法は、平面での培養と比べエクソソームに含まれる特有のタンパク質「CD63」を約10倍分泌できる特長を持つ。

 「様々な細胞へ分化できる機能を持つ幹細胞を扱うには、培養や保管といった各工程で幹細胞培養液の維持を確認する基盤技術が必要となる。そこで、当社では徹底した細胞のモニタリングによって、工程ごとに幹細胞の特性を確認できるシステムを採用するなど万全の供給体制を構築している」(藤田氏)
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