花王、炭酸が毛髪改質成分の毛髪への浸透を高めることを確認

花王、炭酸が毛髪改質成分の毛髪への浸透を高めることを確認
 花王ヘアケア研究所は、炭酸により、毛髪改質成分の毛髪内部への浸透が高まることを確認した。

 これにより、炭酸を併用すると、毛髪のダメージ、ハリ・コシやうねりなど、さまざまな状態に対する改質剤の効果が高まる可能性が示唆された。

 毛髪のダメージやうねり、ぱさつきなどといった現象は、化学処理やエイジングなどさまざまな影響によって生じる。この解決方法の1つとして、毛髪内部に改質成分を届けるというアプローチが有効であり、これまでに同社は、有機酸に着目し、毛髪内部の空洞補修をはじめとする美髪化技術を確立し商品に応用してきた。

 その技術の進化として、今回、炭酸に着目した。炭酸は炭酸泉や炭酸水などに含まれるが、古くから血管拡張を介した血行促進作用を有することが知られており、近年ではサロンなどにおいても、炭酸を用いたメニューが取り入れられている。また、花王では、炭酸が肌の角層タンパク質に作用することで、肌をなめらかにする可能性を明らかにしてきた。

 そこで今回は、毛髪も角層と同様タンパク質が主成分であることから、炭酸が毛髪に及ぼす影響について検証した。

 花王は、「毛髪を炭酸水に浸漬させると、毛髪は内部に水を抱え込みやすくなる」作用について、毛髪の主成分がケラチンというタンパク質であることに着目し、ケラチンに炭酸がどのような影響を与えるのかを検討した。

 炭酸水に羊毛由来ケラチンパウダーを浸漬すると、水に浸漬したときと比較して外観が変化し、ケラチンパウダーが大きくなる様子が観察できた。また、示差走査熱量測定による熱容量解析結果から、炭酸水に浸漬したケラチンパウダーは、水と比べて水融解エネルギーが大きいことが確認され、炭酸水中ではケラチンパウダーに含まれる水量が多くなっていることがわかった。

 これらの結果から、炭酸水に浸漬した毛髪が水を抱え込みやすくなるのは、炭酸が毛髪内部のケラチンに作用している可能性があると考えた。

 炭酸が毛髪由来のケラチンや毛髪に対して水を抱え込みやすくさせるという可能性に着目し、炭酸を水に溶ける成分と同時に用いた場合、毛髪に及ぼす影響に違いがあるかどうかを確認した。

 パラトルエンスルホン酸塩(pTS塩)は、継続して使用し毛髪内部に蓄積すると、応力緩和効果を有し、有機酸の1つであるコハク酸は、毛髪の表面に浸透し、pTS塩の効果を補助する効果がある。

 そこで、pTS塩とコハク酸を配合した、炭酸ありの製剤と炭酸なしの製剤に毛髪を15分浸漬し、毛髪の応力緩和に与える効果を比較した。

 その結果、炭酸ありの製剤では、炭酸なしの製剤では差が見られない条件で、応力緩和率が有意に高くなることを確認。炭酸を組み合わせることで、pTS塩とコハク酸の応力緩和効果が高まる可能性が示唆された。

 さらに、pTS塩とコハク酸を含む炭酸ありの製剤と炭酸なしの製剤をそれぞれ毛髪に処理した後、毛髪の断面をToF-SIMS*2 で観察し、毛髪内部におけるpTS塩の浸透分布を可視化した。その結果、炭酸ありの場合に炭酸なしと比べて、毛髪内部におけるpTS塩に由来する信号(シグナル)の強度が増加しており、炭酸によるpTS塩の浸透促進が示唆された。

 今回の検討で、毛髪改質効果をもつ成分に炭酸を組み合わせることにより、毛髪に対する効果を高められる可能性が示唆された。これは、炭酸により、改質成分の毛髪内部への浸透が促進された結果であると推察される。pTS塩の浸透を高めることで応力緩和率が増加することから、毛髪うねりを改善できる可能性があるという。

 炭酸をヘアケアに応用することは、化学処理や加齢により変化した毛髪を健常、もしくは美髪に導く有効な手段の1つであることから、今後も毛髪への効果・作用メカニズムについて検討を進めていく。
ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 花王、炭酸が毛髪改質成分の毛髪への浸透を高めることを確認

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop