資生堂、加齢による皮膚免疫力変化のメカニズムの一端を解明

粧業日報 2020年10月21日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 皮膚本来の力を引き出す新たなスキンケア技術の開発へ
資生堂、加齢による皮膚免疫力変化のメカニズムの一端を解明
 資生堂は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)との共同研究により、加齢した皮膚では真皮中のランゲルハンス細胞の前駆細胞(以下、LC前駆細胞)が減少するとともに、LC前駆細胞を表皮に誘引する因子の産生が低下することにより、成熟したランゲルハンス細胞の減少を引き起こしていることを発見した。

 今回の研究によって、これまで未解明だった皮膚中のランゲルハンス細胞の加齢による減少メカニズムの一端が解明された。なお、研究成果はJournal of Investigative Dermatology誌に掲載されている。

 皮膚を若々しく・美しく保つためには、皮膚本来の力を引き出し、皮膚の生命力を高める恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要だ。

 皮膚免疫で重要な役割を果たすのがランゲルハンス細胞であり、同社は30年以上にわたりCBRCと皮膚の免疫に関する共同研究を行ってきた。

 今回の共同研究では、加齢に伴う皮膚免疫機能の変化に着目し、これまで以上に厳密な実験条件の下で、詳細なメカニズムの解明を目指した。

 研究では、若年層(16~28歳、N=20)と高齢層(53~74歳、N=21)の女性に共通した非露光部位である胸部から採取された皮膚中の、ランゲルハンス細胞、LC前駆細胞、LC前駆細胞誘引因子について、多重免疫染色法などの手法を用いて詳細に解析した。

 その結果、過去の研究結果と同様に、加齢した皮膚において表皮内のランゲルハンス細胞は大きく減少していることが確認された。

 次に、LC前駆細胞と考えられるCD14、CD207、CCR6陽性細胞の数を検証したところ、高齢層の真皮では有意に減少していることを見出した。

 また、LC前駆細胞を表皮へと誘引する因子の発現を調べたところ、それらの中でも、加齢した皮膚ではCXCL14の発現量が著しく減少していることがわかった。

 さらに、実際に皮膚を器官培養し、LC前駆様細胞(THP-1)を使って皮膚への遊走を解析した結果、高齢層の皮膚では、若年層に比べてLC前駆様細胞の遊走が著しく低下していることが確認された。

 また、若年層皮膚におけるLC前駆様細胞の高い遊走に対して、抗CXCL14抗体を加えることで誘引因子の働きを抑制した影響を評価したところ、LC前駆様細胞の遊走が顕著に低下した。

 一方で、遊走の低い高齢層皮膚に対してCXCL14を添加したところ、遊走は大きく増加した。

 ランゲルハンス細胞は、加齢によって減少することが報告されていたが、今回の研究データは、そのメカニズムの一端を示唆していると考えられる。

 これは、LC前駆細胞の誘引因子CXCL14の機能を保ち、LC前駆細胞の表皮への供給能力を維持することが、表皮中の成熟したランゲルハンス細胞の維持のために重要であることを示唆している。

 今回の発見により、加齢によるランゲルハンス細胞の減少を予防し、皮膚の生命力を高め皮膚本来の力を引き出すことで肌を若々しく、美しく保つための新たなスキンケア技術開発を目指していく。
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