花王は、塗るだけでほうれい線を目立たなくする新しいメークアップ技術を開発した。この技術をメークアップ商品の開発に応用し、ほうれい線を目立たなくすることで、少しでも若々しく見せたいという人々のニーズに応えていく。
人の見た目の年齢は、シワやシミ、深く刻まれたほうれい線などの影響を受け、中でも40代以上の女性の多くは、ほうれい線に悩んでいることがわかっている。
ほうれい線は、目もとや額などほかのシワと比較して深く、さらに重力によりたるんだ肌が上から覆いかぶさり影が強調されることから、ファンデーションやコンシーラーなどを用いてカバーすることが難しいと考えられてきた。
そこで今回は、頬のたるみを手で持ち上げると、ほうれい線が目立たなくなる現象に着目し、頬のたるみを物理的に持ち上げることで、ほうれい線を即時に目立たなくするメークアップ技術の開発に取り組んだ。
研究では、特定のポリマーを含む液体が乾燥すると収縮して膜をつくる性質にヒントを得て、その収縮する力を利用して頬のたるみを持ち上げられないかを検討した。
まず、頬のたるみを持ち上げるために必要な力を調べ、その力に相当する塗膜の乾燥時の収縮率を算出した。
さらに、製剤が乾燥した時に塗膜が割れないようにするためには柔軟性も重要であることから、高い収縮性に加え、肌への密着性も高く、適度な柔軟性も有するポリマーのスクリーニングを行った。
収縮率は、PETフィルムに製剤を塗布し乾燥した時に生じる曲がり角度から算出し、柔軟性は、製剤を乾燥させた塗膜を、直径の異なる円筒形のPETフィルムに沿って折り曲げ、膜が割れない最小の直径をもとに評価。その結果、あるシリコーン系の疎水性ポリマーが、収縮性と柔軟性、両方の特性を発現するユニークな素材であることを見出した。
さらに、肌に塗った時に自然な仕上がりにするためには、薄く塗布しても同様の収縮力を保つことが必要であることを踏まえ、収縮率が速く乾燥するほどその率が高くなるこのポリマーに揮発性の高い油剤を加えてモデル処方を完成させた。
次に、40~50代女性12名を対象に、モデル処方を頬と口もとに塗布し、専門評価者が塗布前後のほうれい線の目立ちを「ほうれい線グレード」をもとに比較した。その結果、12名中11名において、ほうれい線の目立ちが改善された。
続いて、12名のうちの11名を対象に、顔の3D画像を撮影でき、さまざまな部位の距離を測定できる装置「VECTRA M3」を用いて、塗布前(素肌)と塗布後のほうれい線の最深部の変化を調べた。
その結果、塗布後には、ほうれい線の深さが平均で約1㎜浅くなっていたことが確認できた。