資生堂は、男性ホルモンによりランゲルハンス細胞(LC細胞)が担う皮膚免疫が低下するメカニズムを解明した。
また、男性ホルモンは、LC細胞の重要な機能の1つである刺激応答鎮静化機能を低下させ、さらにはLC前駆細胞の誘引因子の発現を減少させることでLC細胞の成長を阻害することを発見した。
さらに、椿の花や葉から抽出した複合成分(カメリア複合体)が、男性ホルモンによって低下した皮膚免疫を顕著に回復させる効果があることを見出した。
今回の研究成果を活用し、男性ホルモンと皮膚免疫に着目した、男性の皮膚本来の力を引き出す新たなアプローチを提案していく。
皮膚を若々しく、健やかで美しく保つためには、皮膚本来の力を引き出し、皮膚の生命力を高める恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要であり、それを維持するための機能である皮膚免疫にて、LC細胞が重要な役割を果たしている。
同社は30年以上にわたり皮膚免疫に関する研究を行い、老化やストレスによりその機能が低下するメカニズムを世界に先駆けて解明してきた。
2020年には、LC細胞が加齢によって減少し、その原因の1つが表皮への呼び寄せ因子の減少によることを明らかにしている。
男性と女性には免疫応答に違いがあり、男性は女性よりもワクチンに対する反応性が低いことや免疫が過剰になる自己免疫疾患の罹患率が極めて低いことが知られている。
また、LC細胞は、男性ホルモンの投与によって減少することが報告されているが、LC細胞の重要な機能である刺激応答鎮静化機能に関する影響については明らかにされていなかった。
今回は細胞レベルの実験により、男性ホルモンにより「LC細胞の重要な機能の1つである、刺激応答鎮静化機能が低下すること」「LC細胞の成長に欠かせないLC前駆細胞の誘引因子の発現が低下すること」を発見した。
つまり、男性ホルモンは、LC細胞の機能と成長を阻害することがわかった。また、男性ホルモンによる影響を抑制する成分を探索した結果、椿の花や葉から抽出した複合成分(カメリア複合体)に効果があることを見出した。
研究では、まずLC細胞の免疫応答を担う鎮静化酵素の発現への影響を調べたところ、男性ホルモンにより鎮静化酵素の発現が著しく減少し、LC細胞の機能が低下することがわかった。また、その減少はカメリア複合体により顕著に改善された。
続いて、LC前駆細胞を表皮へと誘引する因子(CXCL14)の発現への影響を調べたところ、男性ホルモンによりCXCL14の発現量が著しく減少し、LC細胞の成長が抑制されていることがわかった。また、その減少はカメリア複合体により顕著に改善された。
12月2日に開催された「男性肌研究に関する新知見」をテーマにしたオンライン技術セミナーにて、資生堂グローバルイノベーションセンター 細井純一シニアサイエンティストは、「男性ホルモンは男性に豊富に存在する生体に必要なホルモンで、精力的に仕事をするときなどに分泌されるが、今回、皮膚の免疫細胞の刺激応答鎮静化機能にとってはネガティブに働くことが明らかになった。皮膚免疫は、肌を健やかに保つために重要な役割を担っているため、男性には、皮膚の防御機能を高めるようなケアが必要であることが示唆される」と語った。