資生堂は、モンテカルロシミュレーションを利用して肌の質感を正確に再現する光学シミュレーションシステムを開発することに成功した。
今回、同社がグローバルで蓄積した様々な肌測定データや多種多様な粉末製品の処方を新たに導入し、繰り返し検証することにより、製品開発の初期段階から塗布後の仕上がりを自由自在に画像で再現することが可能となった。
従来のシミュレーションシステムでは、肌の光学特性やファンデーション塗布後の肌の仕上がりを完全に再現することは不可能だったが、今回開発した新たなシステムにより、これまで以上に多様なニーズに応えられる製品の実現につなげることができる。
この技術は、塗布時の透明感とカバー力を両立しながらも自然なつや感を実現している「マキアージュ ドラマティックパウダリー EX」(2月21日発売)などの商品設計に活用するとともに、今後当社のメークアップ製品の開発に幅広く活用していく。
ファンデーションの開発には、「塗布後の質感・凹凸補正」「使用感、化粧持ち」「紫外線・乾燥などを防ぐ機能性」などの様々な要素が求められ、それらを高次元で実現する必要がある。
このうち、「塗布後の肌質感」は、肌の見た目に直結する非常に重要な要素で、従来の製品開発においては、ファンデーションの塗布後の肌の質感や色調について、訓練された専門のパネルが目視で観察・評価を行っていたが、多くの労力や時間が必要であり、より効率的な評価法が求められていた。
今回、同社はグローバルで蓄積された多様な生活者の肌測定データを活用し、光学シミュレーションの1つとして活用されているモンテカルロシミュレーションに、色むら発生に関する数理モデルを応用して組み合わせることにより、これまで以上に正確なシミュレーションシステムの開発を目指した。
皮膚にファンデーションなどを塗布した状態を正確に再現するためには、皮膚内部の光学パラメーターを適切に設定する必要があることから、研究活動でグローバルに蓄積した「肌の色調データ」「肌内部の光拡散性」「表面反射の測定結果」「多種多様な粉末処方」などの光学特性を従来のシミュレーションと整合させるとともに、肌本来が持つ色調の不均一性を制御する技術を融合することにより、肌質感をより正確に再現するシミュレーションシステムを構築するに至った。
ファンデーションを肌に塗布した際の仕上がりの均一さについて、正確に再現するために様々な条件を繰り返し検証した結果、長波長領域の光(赤色光)を積極的に透過させる粉体を利用して肌内部にも光を拡散しやすくしながら、ファンデーションの隠ぺい力を、高すぎず、シミ・そばかすが目立たないようにすることで、均一な仕上がりを実現できる最適な領域を見出した。
次に、ファンデーションの仕上がりにおいて、近年特に求められている「自然なツヤ」を実現するための条件の検証を行った。
さまざまな条件を繰り返し検証した結果、前述の通り均一な仕上がりで毛穴が目立たなくなるような付着条件では、皮丘にファンデーションが比較的薄く付着している状態であることがわかり、そのため薄い状態でも塗布時に配向しやすい最適なサイズ・素材の板状粉末を選択した処方を構築することが重要であることが示された。
今回開発したシミュレーションシステムを活用することで製品の設計段階から様々な仕上がりを瞬時に画像に再現し、処方開発に応用することが可能となった。
特に均一な仕上がりや適度なツヤ感をシミュレーションによって自在に再現できることは、効率的な製品開発につながる成果であり、同社がこれまでに蓄積した世界中の膨大な顧客データを活用することにより、世界中の多様な生活者の嗜好性に合わせた「塗布後の質感」「ツヤ感」を実現する、幅広い製品の設計が可能になる。