コーセー 小林一俊社長 2021年新春インタビュー~世界で存在感のある究極の高ロイヤルティ企業を目指す

週刊粧業 2021年1月1日号 8ページ

2021年1月14日 15時50分

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 コーセーは、新型コロナウイルス感染症の影響により上期売上高が23.7%減少したものの、ピンチをチャンスに変えてきたこれまでの経験・ノウハウを活かし、コストコントロールを実施することで、40億円の営業利益を確保するなど、戦後最大の危機にあって変化対応力の高さを社内外に示した。

 中期ビジョンで目指す「世界で存在感のある究極の高ロイヤルティ企業」の実現に向けては、「ロングセラーブランド・商品を数多く有することによって、その人にとってなくてはならない存在になることが重要」と語る小林一俊社長に、新年度の課題と抱負についてインタビューした。

ピンチをチャンスに変え
リスクに強い企業へ進化

 ――まず、2020年を振り返っていただけますか。

 小林 日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にありましたが、足元では下げ止まりつつあります。

 化粧品業界においては、経済産業省の化粧品出荷統計によりますと、販売個数・販売金額ともに前年を下回っています。 

 このような市場環境の中、当社グループにおいては、過去の苦しい局面においてピンチをチャンスに変えてきた経験・ノウハウを有しており、今後もグローバル・ボーダレスに事業を拡大していくためにリスクに強い企業に進化すべく、課題に取り組み、改革を進めています。

 国内では、4月~5月にかけて緊急事態宣言が発出され、百貨店が約2カ月間クローズしました。この販路においては、オンラインやデジタルを活用したお客さま対応が遅れており、大いに反省すべきと感じています。

 ただ当社では、デジタルマーケティング戦略部を中心に、「デジタルプラットフォーム」や「オンラインカウンセリング」の本格稼働に向けた準備を相当前から進めていました。

 グループのオフィシャルWebサイト「Maison KOSÉ」では、お客さまからの買い場がなくなってしまって困るという多くの声を受け、急遽、緊急事態宣言中のみ時限措置として、通常ECで取り扱っていないブランドを追加し、購入できようにしました。

 また、社内においてもデジタル改革の一環で、年初に本社をフリーアドレス化し、昨年のうちにノートパソコンを2000台購入するなど、どこでも仕事ができる業務体制の構築を図ってきたことが奏功し、緊急事態宣言発出後はスムーズに社内業務をリモート環境に移行することができました。

 私は数年前から“高リスク社会”の到来を指摘し、「ニューノーマル」という言葉を社内外に向けて頻繁に使い、これまでの常識が通用しない時代が必ず到来することを訴え続けてきました。

 新型コロナウイルスの世界的な蔓延とその影響は想定以上でしたが、この出来事についても、極力ポジティブに考えるようにしています。

 「非常時ほど新しいものが生まれる」とよく言われますが、このコロナ禍は、デジタル化を推進する上では絶好のチャンスであり、商売の仕方やお客さまへのアプローチの仕方を大きく変えていくまたとない機会と捉えています。

 海外は、アジアが好調に推移しました。特に、中国ではオンラインがしっかりと機能する中で、オフライン販売も早い段階で回復し、業績を大きく牽引しました。日本ではこのようなオンラインとオフラインの融合が図れていなかったのは反省点であり、今後の課題として改革を進めていきます。

 ――ハイプレステージの動向はいかがですか。

 小林 コロナ禍においては専門店流通のたくましさを実感し、お客さまとの絆の深さについて、我々の強みであると再認識しました。

 実際、2019年9月の消費増税前の特需の反動をものともせず、9月、10月と非常に健闘しています。お客さまとの強い絆をより強固にしていくため、今後も継続して強化を図っていきます。

 ――専門店チャネルをどのように発展させていくお考えですか。

 小林 お客さまはより多様化していきます。今後もカウンセリング需要がなくなることはなく、店頭でのカウンセリングを充実していかなければなりませんが、そこに集中するあまりデジタルでカウンセリングを行うという視点が欠落していました。

 この部分のテコ入れは必須であり、フェイストゥフェイスのカウンセリングと、デジタルのカウンセリングの両立を図っていきます。

 ――「コスメテリア構想」について考えをお聞かせください。

 小林 コスメテリアはまだまだ途上であると感じています。当社の様々なブランドを専門店流通を通じ、顧客ニーズに即した形で提案していくことを現在進めていますが、将来はコスメテリアを「Maison KOSÉ」と融合し、ビューティアトラクション的な要素を付加価値として提供する新たな業態にしていくべきと考えています。

 「Maison KOSÉ」は、当社がすでに銀座と表参道で展開していますが、全国各地にビューティアトラクションがある状態が理想的です。将来的には、それぞれのエリアで意欲のある専門店さまにその役割を担っていただきたいです。

 ――プレステージの動向はいかがですか。

 小林 私は、制度品メーカーが長年切磋琢磨し積み上げてきた化粧品の価値づくりや売り方、共存共栄関係がここへ来て壊れかけてきていることを非常に危惧しています。

 やはりプレステージの価格帯(3000円~5000円)は、お客さまにとって付加価値が高く、化粧品が提供するワクワク感や夢、肌を健やかに保つことなどに焦点を当てて品質やコンセプトで競うべきです。

 当社としては、安易に価格で勝負することなく、プレステージに相応しい価値を追求していきます。

 ――コスメタリーの動向はいかがですか。

 小林 当社では、付加価値の高いものをお手頃な価格で提供するという姿勢でコスメタリー事業に向き合ってきましたが、コロナ禍における価格の二極化の影響を受け、こうした姿勢が裏目に出てしまい、商売としては厳しい局面にあります。

 ただ、コスメタリー事業については、今の業績だけを見て止めるべきというご指摘も受けますが、私は絶対に止めてはいけないと考えています。化粧品市場の両極をおさえておく必要は絶対ありますし、コスメタリーならではの役割がありますので、今後も強化を図っていきます。

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