コーセーは、東北大学と共同し、世界で初めてシミの原因となるメラニン色素そのものをヒト皮膚組織内にて、三次元的に蛍光で可視化することに成功した。
今回の成果は、メラニン色素を蛍光標識する試薬「HA-M-INK」を東北大学 福田光則教授と共同開発し、コーセー研究所フランス分室にて様々なスキンフォトタイプのヒト皮膚組織を用いて観察することで実証された。
これは、様々なフォトタイプの新鮮皮膚の調達から観察までをスピーディに行うという、日本国内では難しいスキームにより実現したフランス分室ならではの成果といえる。同研究は、2020年6月に開催された第20回国際色素細胞学会(IPCC)にて発表し、2020年11月の学術論文雑誌「International Journal of Molecular Sciences」に掲載された。
肌は紫外線を受けるとメラニン色素を生成し、紫外線から身体を保護する働きがあるが、メラニン色素が過剰に蓄積するとシミとなって肌表面に現れる。
そのため、シミに対する有効な美白アプローチを開発するためにはメラニン色素の所在を可視化することが重要となる。
しかし、これまでヒト皮膚組織内のメラノサイト(色素細胞)やケラチノサイト(表皮細胞)の双方に存在するメラニン色素そのものを蛍光で可視化することは実現されていなかった。
開発にあたっては、「M-INK(エム インク、Melanocore Interacting Kif1c-tail)」という東北大学 福田光則教授により開発された蛍光可視化試薬からスタートした。
これは、メラニン色素を直接標識することが可能で、これまでにメラノサイト中のメラニン色素を可視化できることが実証されてきた。
今回、同社は福田教授と共同して、この「M-INKにHemagglutinin(HA)」タグをつけた「HA-M-INK」を開発し、ヒト皮膚組織内のメラノサイトとケラチノサイトの両方に存在するメラニン色素そのものを蛍光観察することに成功した。
この「HA-M-INK」を用いて、フランスにて様々なスキンフォトタイプの皮膚を解析したところ、肌の明るさに応じてメラニン色素の量や分布が大きく異なることを実証した。
さらに、HA-M-INKを、皮膚組織内を立体的に観察可能な共焦点レーザー顕微鏡と併用することにより、皮膚内部におけるメラニン色素を広範囲かつ3次元的に解析することができるようになった。
今回の技術により、これまで難しかった肌内部のメラニン色素そのものを直接蛍光観察できるようになった。
今後、この技術を用いてシミ・色ムラ部位でのメラニン色素分布の解析をすることで、ケラチノサイト(表皮細胞)に過剰に蓄積されたメラニン色素に有効な成分の開発や、肌色の異なる顧客のシミ・色ムラに対応した美白アプローチの開発などにつなげていく。
これからもフランス分室では、現地環境を活かした皮膚科学研究を推進することで、世界の様々な肌特性に合わせた美容価値提供を目指していく。