化粧品原料商社のマツモト交商では、オリジナル原料の開発や処方組みの提案などを行っている。
研究開発部の井口里紗氏に話を伺った。
――入社後、これまで携わってきた研究開発について教えてください。
井口 スキンケアやサンスクリーン分野をメインに、当社で取り扱う原料の評価やその原料を使った処方の開発・提案を行うとともに、基礎研究では、スキンケア分野において、大学との共同研究を通じて皮膚浸透性の評価技術を主軸に研究を行い、国際化粧品技術者会連盟が主催する世界最大の化粧品学会「IFSCC Congress」にて発表を行っている。
昨年の発表は、化粧品の有効成分の皮膚浸透の状態を非標識で検出できるパルス波形整形誘導ラマン顕微鏡という技術に関するもので、従来のラマン顕微鏡では、確認したい有効成分を低濃度で検出することが難しかったが、当社技術では、皮膚由来のバックグラウンドを抑え、対象の有効成分の挙動を追うことが可能だ。
――コロナ禍で新たにスタートした研究や注力している領域はありますか。
井口 マスクとの摩擦に強いベースメークや、マスクを常用するようになり、肌環境が変わったことで発生した肌悩みなど、新たなニーズに合わせた処方の提案を積極的に行うとともに、アイメークやスキンケア関連の処方提案の拡大にも注力してきた。
また、新型コロナウイルス拡大前は、最先端の検査機器を取り揃えた当社オープンラボへお客様を招き、研修を行っていたが、リモートワークが中心となり来社いただくことが難しくなったことから、ウェブ研修に注力しており、今までと異なる形式においても充実した研修を行うことができるよう、新たな研修プログラムを開発中だ。
お客様は化粧品メーカーの研究者が中心であり、普段感じている悩みを直接解決できるよう、処方開発を行うにあたってベースとなる知識や情報を提供している。
――今後の展望をお聞かせください。
井口 想定よりもコロナ禍が長引いている状況だが、収束すれば、高機能な化粧品のニーズが再び高まると考えているため、顧客ニーズにしっかりと対応していきたい。
さらに、商社として化粧品原料や処方だけでなく研修や情報提供などの提案に注力するとともに、独自のナノカプセル原料「NanoCap」の応用や他分野への展開、評価データの充実を目指していく。
「NanoCap」は、有効成分を肌の奥まで届かせることができる浸透カプセル化技術である。既にセラミドなどの有効成分を配合した標準品のラインナップが展開されているが、顧客のコンセプトに沿ったオリジナル製品も提供可能となっている。
なお、リモートワーク中心の働き方となったことを受け、オンライン上でもお客様と密なコミュニケーションがとれるように、動画の活用など提案方法を工夫している。
日本だけでなく海外のお客様に対しても有用なコミュニケーションツールを構築していきたいと考えている。