資生堂、角層細胞間脂質の新評価法を確立

粧業日報 2021年5月26日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 洗い流しても肌にとどまる独自成分が角層バリア機能を良好に保つことを確認
資生堂、角層細胞間脂質の新評価法を確立
 資生堂は、北海道大学電子科学研究所との共同研究により、肌のバリア機能に大きく関わる角層細胞間脂質の評価法を新たに確立することに成功した。

 この手法を用いて、同社が独自に開発した成分「EPDMEs」が、細胞間脂質の整列性を高め、バリア機能を良好に保つことを確認した。

 また、この独自成分は、肌に塗布した後に洗い流したとしても、角層中に成分がとどまることがわかっている。

 同社はこれまでにも、肌に必要なうるおいを奪わずに洗い上げる洗浄製品の開発などに取り組んできたが、今回の技術を応用し、これまでにない高付加価値の洗浄製品の開発を目指す。



 皮膚の最外層である角層は、角層細胞とそれらの隙間を埋めるように存在する細胞間脂質から構成され、肌の水分蒸散を防ぎ外界の刺激から守る「バリア機能」と、水分を保持して肌のうるおいを保つ「保湿機能」という重要な役割を担っている。

 細胞間脂質は、角層の下にある層(顆粒層)から放出された後、健康な肌では角層で規則的に配列し、秩序ある層状構造を形成するが、角層表面では乾燥や紫外線などの外的要因により構造が乱れることがある。

 先行研究で、この層状構造は肌の状態と密接な関係性があり、構造が乱れることでバリア機能が低くなることがわかっている。

 同社では、肌のバリア機能を良好に保つアプローチの探索にあたり、従来の手法だけでは十分に検討しきれなかった細胞間脂質の整列性を解析するため、北海道大学電子科学研究所との共同研究により、新たな評価手法の開発を行った。

 3次元培養表皮モデルと多光子顕微鏡を用いた実験により、細胞間脂質の整列性を数値で評価することに成功し、従来よりも精査な解析を実現した。

 また、その数値評価の結果を用いて3次元画像化することで、細胞間脂質の整列性を可視化できるようになった。

 独自に開発した成分「EPDMEs」と水、一般的な保湿成分をそれぞれ3次元表皮モデルに塗布し、新評価法で解析を行った。独自成分「EPDMEs」の塗布により、特に表面付近の細胞間脂質の整列性が高まることがわかった。

 これはつまり、バリア機能の改善が見込まれることを示唆している。一方、水や一般的な保湿成分を塗布した場合は、細胞間脂質の整列性の改善は確認できなかった。

 また、この独自成分は、肌に塗布した後に洗い流したとしても、角層中に成分がとどまることが確認されている。

 つまり、この技術を活用することで、洗浄効果と肌のバリア機能改善効果を同時に叶えるアプローチを実現できる可能性があることが示唆された。

 今後も、新たな技術を組み合わせながら、同社の強みである皮膚科学研究を深め、より多くの人々の健やかで美しい肌の実現に向けて研究を進めていく。
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