資生堂は、東京都立大学との共同研究により、2種類の触感評価デバイス「振動摩擦センサー」「接触力センサー」を開発し、それらのセンサーによる測定値が専門評価者の感覚評価スコアと相関が認められることを確認した。
従来は他人が体験する触り心地を第三者が理解することは困難とされていたが、このセンサーはその人が肌状態を確認する手の動作に着目し、さらに高精度に触感を数値化するため、他人が手で感じている触感を客観的に数値で把握できるという。
「振動摩擦センサー」は、接触子が肌の上で滑って振動と摩擦を測定し、「しっとり感」や「なめらかさ」などの評価が可能で、「接触力センサー」は接触子で肌を押して接触力を測定し、「柔らかさ」や「弾力感」などの評価が可能だ。
技術開発では、日本人と米国人が肌の触感を確認する動作について検証した結果、人は肌の触感の種類ごとに手を肌の上で滑らせたり、押したりするなど動作を変えて確認していること、日本人と米国人との触感確認動作には違いが認められることがわかった。
そこで、それぞれの動作で手が感じている物性を高精度で測定できる肌の触感評価専用の2種類のセンサーの開発に着手した。
顧客が手で肌を滑らせて感じている「しっとり感」や「なめらかさ」を高精度に把握し、数値化を可能とする「振動摩擦センサー」は、従来の感触センサーが測定者自身で接触子を肌の上を滑らせて測定する必要があったのに対し、モーターの回転を利用して肌の上を滑ることができ、頬などの狭い領域でも安定して測定可能で、指紋を参考にした表面形状を接触子に付与することで、手を肌に滑らせた時に感じる振動と摩擦を同時に計測することができる。
顧客が手で肌を押すことで感じる「柔らかさ」や「弾力感」を高精度に把握し、数値化を可能とする「接触力センサー」は、従来の計測技術が人により異なる肌の柔らかさの違いを高精度に測り分けることが難しく、肌を押した時の触感に相関する特徴量に関する知見が不足していたのに対し、接触子が手のように肌を押し込んだ時の接触力を、搭載された高精度な力センサーにより測定するので、押し込んでいる間の測定波形を分析することにより、肌の個人差を示す特徴量の算出が可能となった。
その特徴量を解析したところ、接触子が肌を押した後の戻り率(圧縮回復性)が弾力感と相関することがわかった。圧縮回復性は、年齢との相関も確認されており、年齢による肌柔軟感の変化も推定できることがわかった。
これら2つのセンサーを活用することにより、今後は顧客が感じている肌の触感の違いをより高精度に評価することが可能となる。
また、世界の顧客の化粧行動調査の範囲を拡大することにより、多くの国や地域の人々に、真に満足してもらえる商品を届けることが可能となる。
今後は文化や習慣の違いによる感性の特性を明らかにし、同社に蓄積された世界の顧客の触動作知見に基づいて2種類の触感センサーを最適に使い分けて商品開発やサービスに活かすことで、感性・心理研究をさらに深め、製品の効果・効能の追究だけでなく、顧客の心と肌に響くような新たな価値の開発を行っていく。