資生堂、新たなサプライチェーン拠点を大阪茨木市に設立

粧業日報 2021年9月22日号 3ページ

カンタンに言うと

  •  2023年以降、生産数量を約1.6億個まで引き上げ
  • 物流機能と出荷機能を担う統合型物流センターが工場に隣接
資生堂、新たなサプライチェーン拠点を大阪茨木市に設立
 資生堂は、プレステージスキンケア製品の生産と、物流を担うサプライチェーン拠点として、大阪府茨木市に大阪茨木工場と西日本物流センターを昨年12月に竣工した。2021年9月より、工場、物流、コンシューマーセンター、一般向け見学コースの4つの機能を備えた新しいコンセプトのサプライチェーン拠点として始動する。

 同社は、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」になるため、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」のもと、抜本的な経営改革を実行している。

 2030年までにスキンビューティー領域における世界№1の企業になることを目指し、2021年~2023年の主要戦略では、「高収益構造への転換」「スキンビューティーへ注力」「成長基盤の再構築」を掲げている。

 今回、「高収益構造への転換」として生産性の向上、「スキンビューティーへ注力」として生産体制の強化、「成長基盤の再構築」としてサステナビリティを意識した生産供給体制を整えた。

 生産拠点戦略においては、グローバルな視点でサプライチェーン戦略の構築を進めており、原価だけでなく、リードタイムや在庫、原材料調達など様々な要素を加味し、各工場にて、柔軟に対応できる体制づくりを目指す。

 また、IoTやAIなどの最新技術を取り入れるとともに、働く人が誇りを持って快適に働ける工場にしていくことで、業界をリードできるモノづくりの体制を構築していく。

 アフターコロナを見据えつつ、将来予想される国内外の化粧品需要拡大に対応するため、2019年の那須工場、今回の大阪茨木工場に続き、福岡久留米工場(福岡県久留米市)が来年2022年度上期に稼働予定だ。

 新たな拠点では、生産を担う工場に同社として初めて物流センターを併設し、生産から輸送にかかる作業効率を上げ、輸送時にかかるコストや環境負荷を軽減することを目指した。

 また、地域に開かれた工場として一般客向けの見学コースと、顧客の声をモノづくりに生かすためのコンシューマーセンターの分室を新たに設置した。

 大阪茨木工場では、プレステージスキンケア製品の生産工場として、同社のスキンビューティー領域の生産をグローバルでリードしていく。



2023年以降、生産数量を約1.6億個まで引き上げ

 大阪茨木工場は、88の国と地域で展開するブランド「SHISEIDO」の美容液アルティミューンをはじめ、グローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」を中心としたプレステージスキンケア製品を生産する。2023年以降、生産数量を約1.6億個まで引き上げ、将来の需要に対応していく。

 また、環境に配慮した建屋構造を有しており、工場建造物としては評価の高いCASBEE(建築環境総合性能評価システム)のA評価を取得した。

 外壁に軽量で断熱性に優れたサンドイッチパネルを採用したことにより、建物内の断熱性能が上がり、工場、物流センターを運営するエネルギー(CO2)を約30%削減することが可能となった。

 製造時に使用する冷却水については、循環水の再利用により年間6万5000トンの水使用量の削減効果を生み出している。加えて、工場と物流センターが隣接することによって、製品の輸送時にかかるCO₂削減効果は年間60トン以上を見込んでおり、環境負荷軽減に取り組んでいく。

 そのほか、従業員の6割以上を占める女性目線でのワークプレイス改革をはじめ、場所とスタイルを自由に選択できる「ABW(Activity Based Working)」の考え方に基づいたフリーアドレスのオフィス環境を取り入れ、全スタッフ部門を集約した広い空間を設計することで、部門間の交流による業務効率の最大化や、新価値の創出を満たすオフィスを実現している。

 生産現場では、充填仕上げエリアにおいて、材料資材やバルクなど「モノをはこぶ」という作業を自動化する最先端のIoTにより、作業負荷が軽減され、社員が働きやすい職場環境を整えた。

 地域に開かれた工場として、民間、官公庁、学校など、地域の交流活動の場となれるよう、地域との共存共栄を目指す。

 また単なる工場としての機能だけではなく、工場から世界の人々にブランド価値と品質へのこだわりを発信し、資生堂ファンを増やす拠点としても位置づけ、一般客向けに見学施設を導入した迎接棟「SHISEIDO BEAUTY SITE」をオープンし、2022年以降工場見学をスタートする。

物流機能と出荷機能を担う
統合型物流センターが工場に隣接

 西日本物流センターは、統合型物流センターとして、大阪茨木工場の他に同社の国内工場で生産された商品を入庫、保管し、全国7カ所ある出荷センターへ在庫を供給する物流機能(物流センター)と、関西エリアを中心とした近隣のリテーラーに商品を届ける出荷機能(商品センター)を担う。

 国内最大規模の商品保管自動倉庫を介し、隣接する大阪茨木工場で生産された商品の入庫を自動化することで、作業の効率化を図った。また工場、物流センター、商品センターの機能を集約することにより、効率的なサプライチェーンを構築し、市場への商品供給リードタイムの短縮と輸送コストの削減が可能となった。

 同社独自の機能を追加した次世代型マルチシャトルに製函と封函の自動化も加えることで、商品のピッキングから梱包と荷札のラベリングまで同時に行う歩行レスの出荷システム「GP3(Goods to Person for Pick and Pack)」を採用した。

 このシステムは、物流センターの4階と3階の2階層にわたり稼働し、高い出荷能力を有する、効率化を最大限に追求した世界初の出荷システム。荷積み(パレタイジング)や荷下ろし(デパレタイズ)の自動化など、徹底的な省人化を実現し、効率的に製品を市場に届ける設備を備えている。

 新拠点概要/住所=大阪府茨木市彩都もえぎ1-4-1▽土地面積=7万2435㎡▽建築概要=地上7階(鉄骨造)▽投資規模=約635億円▽工場機能(名称)=大阪茨木工場▽生産品目=国内外向けプレステージスキンケア製品▽生産能力=年間約1億6000万個(2023年以降)▽稼働開始=2020年12月21日▽物流機能(名称)=西日本物流センター(WDC)▽配送範囲=西日本エリア中心▽保管能力=3万3000パレット▽稼働開始=2021年3月1日
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