アンチエイジング、日本市場でヒト幹細胞培養液10年の歴史と実績

週刊粧業 2021年11月8日号 8ページ

アンチエイジング、日本市場でヒト幹細胞培養液10年の歴史と実績
 アンチエイジングは2012年の設立以来、ヒト幹細胞培養液を専門に化粧品原料を供給し続けている日本のヒト幹細胞培養液におけるパイオニア企業であり、来年22年には設立10周年を迎える。

 日本市場にヒト幹細胞培養液を導入した同社の10年は、日本市場のヒト幹細胞培養液の歴史そのものとも言える。

 同社の代表取締役牛島美樹氏に、これまでの歴史と現在のトレンド、ヒト幹細胞培養液のこれからについて話を伺った。

 アンチエイジングが設立された2012年は、全世界の再生医療にとって大きな転換期となる年だったといえる。05年に論文捏造が発覚するまで、韓国は世界のトップランナーであった一方、日本では12年に京都大の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞するまで、再生医療の法的整備が全く進んでいなかった。ノーベル賞受賞を機に再生医療新法が13年に公布され、14年に施工されたことで、日本でも再生医療が大きく発展を遂げた。

 また、化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液は、10年に当時のKFDA(韓国食品医薬品安全庁)による医薬品GMPに準じた製造基準が作成され、韓国産ヒト幹細胞培養液の品質が大幅に向上した。

 「絶妙な時代背景の中でアンチエイジングは設立され、ヒト幹細胞培養液を日本に導入することができた」

 しかし、順風満帆なスタートではなかった。牛島氏は「当然ながら当時のヒト幹細胞培養液の知名度はゼロ、原料についての常識もない中、ヒト幹細胞培養液の可能性を様々な企業に説いて回った」と振り返る。

 原料供給開始後、まず反応があったのは、訪問販売やエステサロンなど、機能性原料を求める高価格帯の化粧品を扱うメーカーだったという。

 「この当時、原料を採用してくれた企業さまの中には現在も採用が続いているところもあり、当社とともにヒト幹細胞培養液の日本市場を形成してくれたパートナーとして、大変感謝している」

 日本導入から数年はヒト幹細胞培養液の扱いは同社のみだったが、知名度が上がるにつれ多くの企業が参入。業界として注目を集め始めたが16〜18年で、プロ用化粧品として一つのピークを迎える。

 しかし当時の消費者認知度は、10%に満たなかったという。ただ「その後エステサロンなど美容のプロの期待に応えられるヒト幹細胞培養液の実力が消費者に認知されるのは当然で、今では最も原料を購入してくれているお客様は通販化粧品のメーカー様だ」という言葉からも、ヒト幹細胞培養液の効果実感性の高さが窺い知れる。

浸透性と成分保護が成功のカギ

 同社が原料の実力を広めることに成功したポイントの1つが、リポソームである。リポソームが成分を浸透させる技術ということは知られているが、ヒト幹細胞培養液においては、機能性成分の保護という重要な側面があることが、あまり知られていない。

 「成長因子は塗布だけでは浸透せず、水溶液中では容易に構造が壊れてしまう。そのため原料供給開始当初から、浸透と成分の保護を最重要視してきた。それこそが現在につながっていると確信している」(牛島氏)

 実際、引き合いの多い「RemyEV-3」はリポソームとエクソソームをハイブリッドにし、浸透や細胞への取り込みを最も高めたヒト幹細胞培養液原料といえる。

 成功のポイントは他にもある。ヒト幹細胞培養液の成分の多くは情報伝達物質であり、これを意識した原料の供給方法も、大事な要素となっている。

 例えば「コラーゲンを作れ」という情報伝達物質を細胞が受け取ったとしても、細胞がコラーゲンを作るためには様々な工程が必要になる。中でも最も欠乏しがちなのはビタミンCだが、非常に重要な美容成分である一方で、化粧品には配合しづらい成分の筆頭だ。



 そのため同社は、ヒト幹細胞培養液の原料供給当初からビタミンC誘導体の研究を並行して行ってきた。その研究が結実したのが「Pentide-C」という浸透型ペプチドをビタミンCの安定に用いた新素材である。

 「今年初めて設けられたCITE JAPANアワードにおいて、生体内利用率の高いビタミンCという特性が評価され、技術部門金賞をいただくことができた」

 この浸透型ビタミンC誘導体とヒト幹細胞培養液を組み合わせた「RS Liposome 3.0 Complex」は、「RemyEV-3」と並ぶヒト幹細胞培養液原料の最先端素材だ。「RemyEV-3」が浸透性特化型の原料であるのに対し、「RS Liposome 3.0 Complex」はビタミンCとの相乗効果を狙い、幅広く作用する原料である。

 ヒト幹細胞培養液という素材を知り尽くした同社だからこそ提供できる原料と言えるだろう。

細胞の由来よりも培養技術が品質を高める

 現在、ヒト幹細胞培養液の原料は、様々な由来のものが供給されている。その中にあって、同社は脂肪由来幹細胞にこだわりを見せる。理由について牛島氏は「脂肪由来幹細胞は採取される数が多いので、培養に無理がない。そのため美容において世界中で研究され、論文数が最も多い幹細胞だ。美容において最も結果を残し、また最も研究されているということは、細胞の安全性の担保ともいえる」と語る。

 ただ同社は、細胞の由来よりも培養方法が原料の品質を左右するという考えのもと、培養技術にこだわっている。

 「どこの由来であっても基本的な幹細胞の性質は共通だが、その幹細胞にどのような仕事をさせるかを決定づけるのが培養技術だ。そうした意味では当社のローリングボトル培養法は、高品質なヒト幹細胞培養液を得るのに、現在考えられる培養法の中では最適解の一つといえる」

 幹細胞の分泌物は、培養方法や培養中に与えられる刺激によって大きく変化する。ローリングボトルで得られたヒト幹細胞培養液には、通常の培養と比較して10倍以上のタンパク質やエクソソームが含有されている。

 同社のヒト幹細胞培養液には様々な機能性データがあるが、当然のことながら同社の培養条件でのみ得られたデータである。同じ細胞を用いても培養条件が異なれば、結果は全く異なる。こうした技術の蓄積で、原料を安定的に供給できるのだという。

 10周年を迎えるにあたり、改めて今後のヒト幹細胞培養液について尋ねてみた。

 「10年前、化粧品については素人だったが故に、常識では考えられないヒトの細胞由来という化粧品原料の上梓を実現した。そして10年間、ヒト幹細胞培養液という一つの素材にこだわり、現在では化粧品業界に一つのカテゴリーを確立することができている。今後は確立されたカテゴリーとなったヒト幹細胞培養液の専門家企業として、正しい製品の供給を継続していくとともに、健全な発展を目指していきたいと考えている」
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