資生堂、光老化により肌がくすみやすくなる原因の一端を解明

粧業日報 2021年12月6日号 2ページ

資生堂、光老化により肌がくすみやすくなる原因の一端を解明
 資生堂は、光老化などの影響により後天遺伝学的(エピジェネティック)に肌がくすみやすくなるメカニズムの一端を解明した。

 同社が独自に取得した遺伝子発現データと、外部ビッグデータによるDNAメチル化情報データという2種類の膨大なデータを解析することにより、遺伝子「TIPARP」が光老化によりメチル化され、肌のくすみを抑制するための情報が正常に伝達されなくなることを明らかにした。

 また、深海に生息する微生物由来の抽出液が「TIPARP」遺伝子の発現を促進することを見出した。これにより、DNAメチル化を防ぎ、シミ・くすみに悩むことのない明るい肌をサポートする。

 なお、研究成果の一部は「日本研究皮膚科学会 第45回年次学術大会」(2020年12月11~13日)、「第30回日本色素細胞学会学術大会」(2021年10月23~24日)にて発表している。

 今回の研究は、資生堂独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」のIndividual/Universalというアプローチで進めた。多くのヒト遺伝子発現データを集めて解析し、肌悩みとの関連性を明らかにしていくことで、顧客一人ひとりを理想の肌へ導く新たな提案を目指す。

 同社は、正常な肌と光老化した肌の違いについて調べるため、広範囲な遺伝子を対象に研究を行ってきた。2006年には、当時の化粧品業界において非常に画期的であった「DNAマイクロアレイ法」という網羅的な解析手法を用いて、「非露光部」「露光部」「シミ部位」の肌の約3万個の遺伝子情報を独自に取得し、各部位の遺伝子発現の違いを明らかにした。

 その後、浴びた紫外線量や生活習慣によりDNA情報が後天的に変化するメカニズムである「エピジェネティクス」がこれらの遺伝子発現の変化を引き起こす一端であると考え、さらに研究を進めてきた。今回、こうして積み重ねてきた研究知見と公共のビッグデータを融合した膨大なデータを解析し、より本質的かつ正確に光老化がもたらす肌への影響の原因探索を行った。

 研究では、抗酸化因子の一種で、黄ぐすみやメラニン産生を防ぐ作用をもつなど、肌の明るさに関連しているとされる「TIPARP」について調べた。2種類の膨大な遺伝子情報データを同社独自の方法でバイオインフォマティクス解析を行ったところ、紫外線などによる光老化の影響で「TIPARP」遺伝子の発現制御領域がメチル化し、エピジェネティックに発現が抑制されるため、肌がくすみやすくなることがわかった。

 遺伝子は一度メチル化されると元に戻ることはできず、情報が適切に読み取れなくなり、メチル化されていない状態でも、使用されない状態が続くとメチル化されやすくなるため、同社では「TIPARP」遺伝子の発現を促進し、常に使われている状態をつくり出すことで、くすみにくい肌を維持できると考えた。

 そこで有用な薬剤の探索を行った結果、深海に生息する微生物由来の抽出液が「TIPARP」遺伝子発現を促進する効果があることを見出した。また、抽出液を配合した基剤を連用することで肌の黄ぐすみが減少することを確認した。

 最先端のエピジェネティクス研究により、これまでに浴びてきた紫外線量に関わらず、くすみをケアする新たなアプローチを見出すことに成功した。「TIPARP」の発現を高めることで、エピジェネティックな変化で衰えたくすみ改善機能を正常な状態に近づけるという知見を今後の商品開発につなげていく。
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