資生堂、製品開発の可能性を広げる新規乳化法の開発に成功

粧業日報 2022年2月2日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 独自のナノディスク構造により成分の選択肢や配合量を自在に調整可能に
資生堂、製品開発の可能性を広げる新規乳化法の開発に成功
 資生堂は、高い乳化安定性と使用感・効果感を高次元で両立させる、画期的な乳化技術の開発に成功した。さらに、東京理科大学との共同研究により、世界で初めて同技術による乳化界面の撮影に成功し、乳化メカニズムを解明した。

 今回開発した新たな乳化法では、乳化剤が界面(油と水の境界)に扁平な「ナノディスク」という構造で存在することで、極めて安定な乳化粒子を形成する。また、ナノディスク構造が肌に塗布されると均一なコーティング膜に変化し、べたつきのない心地よい使用感と高い機能性を実現する。

 資生堂では独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」の「Functionality/Japan Quality」というアプローチのもと、良好な感触や高い品質を追求しながら機能性を高めることができる新たな乳化技術の開発に挑んだ。研究の一部は、化粧品技術者の世界大会「国際化粧品技術者会連盟カンクン中間大会2021」(IFSCC Conference 2021)で発表した。また同技術は、1月21日発売の「HAKU 薬用 日中美白美容液」、2月21日発売の「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」などに応用される。今後も基幹乳化技術の1つとして、美類を問わず様々な製品開発に応用していく。

 スキンケア化粧品、ファンデーション、日やけ止めなどをはじめとする全ての化粧品には、高い機能性や有効性が求められると同時に、心地よさや塗布のしやすさ、高い安定性や安全性も求められる。こうした要素を満たすために重要な成分である水と油を混合・安定化するのが乳化技術で、配合される薬剤などの成分、肌質・年齢、求められる使用感触などに応じて多くの選択肢を提供するため、これまで同社は長年にわたり、様々な乳化技術を開発してきた。

 例えば、代表的な乳化剤である界面活性剤を単独で用いた場合、一般的には濃度に応じて安定性が高まる一方で、使用感触が損なわれる傾向がある。また、油の性質によっては乳化できないものが存在するなど、心地よさと機能性をあわせ持つ化粧品開発を進める上では、様々な制約があった。こうした課題を解決するため、新たな乳化法の開発を目指し、研究を進めた。

 今回開発した乳化技術では、特定の環境でのみ「ベシクル」という球状の構造を形成する界面活性剤を活用した。ベシクルを含む水溶液に油を混合することで、ベシクルが「ナノディスク」という円盤状の構造に変化し、界面に均一かつ強固に吸着する。これにより、微量の界面活性剤でも極めて安定な乳化物をつくることが可能になった。さらに、東京理科大学との共同研究により、ベシクルがナノディスクに構造転移し、油水の界面に吸着している様子を電子顕微鏡により世界で初めて撮影することに成功した。

 また、ナノディスク構造による乳化物を肌に塗布すると、柔軟で均一なコーティング膜に変化する。ぬるつきやすい油分はコーティング膜の間に挟まれ、べたつきの原因となる保湿剤などは角層中に浸透するため、なめらかでべたつきの少ない、好まれる良好な使用性を実現することができた。

 新規乳化法がもたらすベネフィットは、「高い乳化安定性による配合可能成分の広がり」「圧倒的な使用感・効果感」という。

 新規乳化技術により、ナノディスク構造を形成する界面活性剤は油に溶解せず表面に吸着し、安定な乳化粒子を形成する。これによって、従来の乳化技術では配合量に制限があった極性油を約3倍量配合できるようになり、その結果より多くの機能性成分を、製剤中に安定に配合することができるようになった。

 また、塗布時に肌の上に形成するコーティング膜構造により、ぬるつきやべたつきを抑制し、高い浸透感を実現するため、従来の技術では強いべたつきを生じる大量のグリセリンを処方へ配合しても、「べたつき」や「油っぽさ」「のびの重さ」が抑えられ、「みずみずしさ」「さっぱりさ」「ハリ感」など、心地よい感触を実現することを確認した。

 「この技術は、乳化する油や、水相に含まれる保湿剤、薬剤の種類や量などの制限を受けにくい理想的な乳化法であることから、スキンケア製品のみならずサンケア製品、メークアップ製品などの幅広い製品へ活用していく」(同社)
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