資生堂、美容行為による行動意識変化を測定できる尺度を開発

粧業日報 2022年4月27日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 感情や行動によい変化をもたらすビューティーソリューションの提供へ
資生堂、美容行為による行動意識変化を測定できる尺度を開発
 資生堂は、美容行為やその結果が、日々の行動意識にどのような影響を及ぼすかを定量的に測定できる行動意識尺度を新たに開発した。

 これまで顧客の言葉でしか理解できなかった、行動意識の変化を数値化して捉えることができるようになり、顧客の肌状態だけではなく、日常生活における感情や行動にも着目することで、その人の「なりたい自分」により近づけるような商品やサービスの開発の可能性が高まった。

 また、今回開発した尺度を用いて、シミがない肌がもたらす感情や行動意識の変化を検証したところ、ポジティブな感情が全体的に高まり、「自分から誘って、友達や誰かと会う」といった外向的な行動意識などが高まることがわかった。

 自分らしい健康美の実現においては、肌などで起こる変化だけではなく、そこからもたらされる気持ちや行動の変化も踏まえることが重要だが、これまで行動意識を定量的に捉える尺度がなかったことから、美容に伴う行動変容を科学的に考察・検討することは困難だった。そこで今回は、美容による行動意識の変化を定量的に評価可能な尺度と、その尺度を構成する質問項目の開発を目指した。

 具体的には、幅広い年代への調査結果を元に2つのステップで新たな尺度を開発を目指した。

 ステップ1として、スキンケアによってどのような行動変容項目が期待できるかを探索するために、Web調査(対象者:日本人女性、20~69歳、5152名)を実施し、行動変容につながる42項目を選定した。ステップ2として、Web調査(対象者:日本人女性、25~74歳、2816名)を再び実施し、選定した42項目に対し、どの程度「始めたい」「挑戦したい」「さらに取り組みたい」と思うかについて回答してもらった。

 その結果、行動変容の意識は4つの尺度(思いやりある他者交流、積極的な他者交流、自己の外見意識、自己の内面意識)で構成されること、またそれら尺度は16の質問項目によるアンケートで測定できることを見出した。また、4つの尺度は誰のための行動であるか(利他的または利己的)と、行動の種類(外見・外面的または内面・内省的)の2つの側面があると考えられた。

 得られた各尺度における年代別の得点傾向を確認したところ、「思いやりある他者交流」は年代が高いほど意識が高く、人生経験を積むことで思いやりをもって他者と接するようになることが推測された。また、「自己の外見意識」は年代が低いほど意識は高い傾向が見られ、若い年代ほど自身の外見を意識することがわかった。なお、他の2つの尺度に年代の差による傾向は見られなかった。

 肌悩みが解消すると行動意識がどのように変化するかについて、シミを一例として実験を行った。35~59歳の日本人女性のうち、シミを気にする人でファンデーションでも隠し切れないシミのある人32名を対象に、素肌の顔画像と、素肌からシミを消す画像処理を施した顔画像を見てもらい、すでに開発済みの化粧の感情意識尺度、今回開発した4つの行動意識尺度の質問紙に回答してもらった。

 その結果、シミのない画像を見ることで快活高揚等のポジティブな感情が有意に高まり、肯定・外向などの意識が有意に向上することを確認した。さらに行動意識は4つの尺度全てが有意に向上することが確認できた。シミがないことにより「自己の外見意識」が向上するだけではなく、その他の「自己の内面意識」や「積極的な他者交流」も向上するなど、さまざまな行動意識を高めることが確認できた。今回の結果から、肌悩みの解消によりポジティブな感情や行動につながる可能性が考えられた。

 今後は、美容行為やその結果が顧客の感情や行動に与える影響をより詳細に、定量的に捉えることを可能にした今回の知見を活用し、肌だけでなく、感情や行動にまでよい変化をもたらすことができる、個々人に合わせたビューティーソリューションの開発や提供を目指して研究に取り組んでいく。
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