ジャパン・コスメティックセンター、国際的なコスメティッククラスターを目指して

週刊粧業 2022年7月11日号 52ページ

カンタンに言うと

  • 海外輸出支援の取り組みを推進、テストマーケティングや勉強会も
  • 立地創業支援事業をスタート、北部九州の産業集積を促進
ジャパン・コスメティックセンター、国際的なコスメティッククラスターを目指して
 一般社団法人ジャパン・コスメティックセンター(JCC)は、2013年11月の設立から、佐賀県・唐津市に国際的なコスメティッククラスターを創出するべく、サプライチェーンの構築や地域素材活用、海外販路の構築など、幅広い事業を推進してきた。また、6月22日付で山﨑信二氏(ブルーム代表取締役社長)が会長に就任した。前会長であるアルバン・ロバート・ミュラー氏は顧問に就任し、新体制のもと、北部九州に国際的コスメティッククラスターを創造するための取り組みを推進していく。

海外輸出支援の取り組みを推進、
テストマーケティングや勉強会も

 JCCは、6月22日オンラインで開催された「2022年度JCC定時社員総会」において、昨年度の振り返りと今後の取り組みについて紹介した。

 2021年度にJCCが注力してきた取り組みの一つとして、海外輸出支援事業が挙げられる。JCC会員・地域産業の海外参入、モノづくりの産地形成を促進するため、ハンズオン支援、展示会への出展支援のほか、必要な知識を提供するセミナーなどを実施してきた。

 2~3月にかけて行ったマレーシアでのテストマーケティングでは、9社・27アイテムを取り扱い、小売店でのテストマーケティングのほか、EC専用サイトでのテストマーケティングを実施した。そのほか、昨年9月には、化粧品のグローバル規制に関するセミナー、11月にはマーケティングセミナーを実施した。

 また、海外販路開拓支援として、ベルギーの2社との輸出レジスト事業、成分表示名称作成の申し込み代行サービス、輸出に関するフォロー、企業マッチングなども行ってきた。

 2022年度については、特に韓国とマレーシアをターゲットにし、韓国クラスターと連携した日韓経済交流会・商談会の開催を進めていくほか、マレーシア市場向け販路開拓支援としては、テストマーケティングに加え勉強会も実施し、より深く現地のマーケティング的な視点で参加ができるよう支援を行っていく。

 地域コスメ販路開拓事業では、展示会への出展や催事などによって、JCC会員、九州各県の地産素材を活かしたコスメ商品の国内販路開拓を支援してきた。2022年度は、九州コスメプロジェクトを中心に、国内だけでなく海外販路開拓もサポートしていきながら、付加価値の高いローカルブランドの創出を支援していく方針だ。

 産業創出事業では、国内外のコスメ関連研究者のネットワークを構築することにより、新技術を創発する場を創造するとともに、産業界に資する人材育成の体制を整備してきた。昨年度佐賀県委託事業として、佐賀大学に共同研究講座を開設し、開設記念セミナーや高校生向けコスメ講座、佐賀大学での講義の実施、佐賀県内企業との共同研究などを進めてきた。今後は、佐賀県内の研究環境の魅力を伝えることを目的に、研究機関の紹介をするスタディツアーの開催を計画しているという。

 ナレッジネットワーク形成事業においては、化粧品に関する様々な分野の専門家ネットワークを構築し、会員企業の相談に対し、専門家によるきめ細やかかつ的確な支援を実施している。2022年度は、様々な分野における専門家の協力のもと、会員のニーズに応える技術相談、セミナーの企画実施を行っていく方針だ。

 海外クラスター連携事業においては、グローバルコスメティッククラスターとの交流・連携強化を中心に海外の最新情報を収集し、JCCのグローバル展開の促進を図った。今後もこうした活動を引き続き行っていくとともに、活動内容に関するHPでの情報発信を強化する。

 会員ネットワーク形成事業については、会員企業・地域産業のビジネスに関する課題や検討項目を把握するとともに、相談対応や支援を行った。

 具体的には、会員アンケートを実施したほか、販路開拓・情報発信をサポートする専門アドバイザー3名を配置し、事業の推進を図った。2022年度は、2021年度に実施したアンケートをもとに、セミナーの開催、相談対応などを行っていくという。

 地域ブランド事業としては、JCCの取り組み成果や会員企業、地域の魅力を、ポップアップギャラリー運営やウェブマガジン発行、セミナー実施など、オンラインからオフラインまで、多様な媒体を通して国内外に発信してきた。2022年度も引き続き情報発信を強化していく。

 地域原料開発支援事業としては、玄海町、薬用植物栽培研究所と連携した事業を実施するための仕組みづくりに着手した。2022年度は、地産原料の探索、地産素材を活用した原料の開発支援や相談対応を通じて、地産素材の活用促進と地域発原料の供給を促進する。

立地創業支援事業をスタート、
北部九州の産業集積を促進

 JCCは、2022年度からの新たな取り組みとして、「立地創業支援事業」「化粧療法連携事業」の2つをスタートさせる。

 立地創業支援事業は、国内外企業の有力案件の発掘、国内外の進出企業への支援を行っていく事業で、佐賀県をはじめとした北部九州の産業集積を促進するものとなっている。

 事務局長を務める藤岡継美氏は、「海外の案件に関しては、JETROと連携した形で企業リストアップ、情報発信を行っている。また、ITを活用した美容健康関係スタートアップ企業の招聘も行っていく」と語った。

 新たに化粧療法連携事業をスタートさせる。公益社団法人国際化粧療法協会やその関係機関と連携し、高齢者等のQOL向上に寄与する化粧療法士の人材育成、普及活動、必要な研究開発を実施する。

 具体的には、化粧療法士育成のための教材開発、化粧療法用化粧品に関する技術開発・研究、認証事業の検討などに取り組んでいく。

 定時社員総会の前に行われた基調講演では、国際化粧療法協会の会長を務める大石華法氏が、「公益社団法人国際化粧療法協会の沿革 ブラインドメイクからはじまった化粧療法」と題して基調講演を行った。

 ブラインドメイクは、2010年10月に美容福祉学の研究者である大石氏によって開発されたもので、視覚に障害を持つ人が化粧を行う技法のことを指す。自分で化粧ができるという喜びを視覚障害者に体感させ、自己肯定感を高める作用などが期待される。自己肯定感の高まりが視覚障害者に外出を促すきっかけとなりうるため、医療現場でも視覚障害者への習得が勧められている。

 また、国際化粧療法協会では、視覚に障害を持つ人だけではなく、高齢者や認知症の人、自閉症などそのほかの障害を持つ人、疾病のある人を対象とした化粧療法・化粧 研究を行ってきた。

 「当協会では、化粧療法士を医療現場で活躍できる国家資格にすることを目指していきたい」(大石氏)

 また、アイスタイルの取締役で一般社団法人バンクフォースマイルズの代表理事を務める山田メユミ氏による「産業界の『ある』と社会の『ない』をつなげるコスメバンクプロジェクトについて」と題した基調講演も行われた。

 昨年11月に設立されたバンクフォースマイルズが推進するコスメバンクプロジェクトは、シングルマザーなど経済的困難下にある女性の支援を目的に、化粧品・日用品メーカーが持つ余剰在庫品を詰め合わせ、支援団体などを通じて無償提供する取り組みとなっている。

 「行き先が決まっていない化粧品を、必要とする方のもとへ届けることで、女性が参画する企業も自信を纏い、前へ進んでいく。そんなポジティブなサイクルを作っていきたい。化粧品がないことで悲しい思いをされる女性のいない社会を目指すことは業界に関わる私たちに求められる責任ではないかと考えている。ぜひ、お気軽にお声がけいただきたい」(山田氏)
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