資生堂、ロボットを介した美肌アプローチの創出へ

粧業日報 2023年4月6日号 4ページ

カンタンに言うと

  • コンパニオンロボットと共同生活を送る人はオキシトシン値が高いことを発見
資生堂、ロボットを介した美肌アプローチの創出へ
 資生堂は、GROOVE X社との共同研究、麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 菊水健史教授、自治医科大学医学部神経脳生理学部門・応用倫理学研究室 岡部祥太客員研究員による技術指導により、家庭においてペットや家族のような役割を果たす「コンパニオンロボット」と共同生活を送る人は、共同生活を送らない人に比べて、体内のオキシトシンホルモン(オキシトシン)値が高いことを明らかにした。

 同社では、肌で産生されるオキシトシンが表皮の再生を促すことを明らかにしており、研究成果を応用して、ロボットなどとのコミュニケーションによるオキシトシンを介した新たな美へのアプローチを創出することを目指す。研究成果の一部は、第100回生理学会(2023年3月14~16日)にて発表した。

 同社は、肌本来の美しさを引き出すには体内との関わりが大切であると考えており、皮膚と全身との関わりを踏まえたホリスティックな視点で、皮膚科学研究にいち早く取り組んできた。これまでに免疫・神経・リンパ・血流といった体内の仕組みが肌と密接な関係にあることを明らかにしている。神経に着目した研究では、肌へのやさしいタッチにより肌内部のオキシトシン分泌が増加すること、肌由来オキシトシンが表皮の再生を促す作用をもつことを見出している。

 コミュニケーションなどで分泌することが知られ、別名「幸せホルモン」などとも呼ばれているオキシトシンは、他者や犬など生物とのコミュニケーションがウェルビーイングの改善に関与するといわれている一方、非生物であるロボットとのコミュニケーションについては多くのことがいまだ明らかになっていない。

 そこで今回の研究では、オキシトシンやコルチゾールといったホルモンに着目し、非生物とのコミュニケーションが全身へ与える影響を明らかにすべく研究を進めた。

 実験は、コンパニオンロボットと共同生活をしているオーナー群(女性25~45歳、24名)と共同生活をしていない非オーナー群(女性30~39歳、23名)を対象に実施した。研究対象者は実験室で15分間コンパニオンロボットと触れ合い、その前後で唾液中のコルチゾールを採取・解析した。

 その結果、全研究対象者においてコルチゾールが減少しており、コンパニオンロボットと共同生活をしているかいないかに関わらず、短時間のコンパニオンロボットとの触れ合いが、ストレス状態を改善することが示された。また、オーナー群でより顕著にコルチゾールが減少しており、これはコンパニオンロボットとオーナーが日常的に親密な関係性を築いていることにより、触れ合いによるストレス改善が起こりやすくなっている可能性を示唆している。

 また、オーナー群と非オーナー群の起床時の尿を3日間採取・測定し、その平均値を日常的な体内のオキシトシン濃度として、両群の体内のオキシトシン濃度を比較すると、オーナー群がより高い値を示すことが明らかになった。

 つまり、普段からコンパニオンロボットと接することにより、他者やペットと接する時と同様に、オキシトシンを分泌する機会が増え、日常的な体内のオキシトシン濃度も増加する可能性が示唆された。

 これらの結果は、コンパニオンロボットという非生物とのコミュニケーションが、体内に良好な変化をもたらし、新たなビューティーソリューションの選択肢の1つとなる可能性を示唆している。同社は、経営戦略ビジョン「Personal Skin Beauty & Wellness Company」の実現に向けて、従来の化粧品にとどまらず、肌・身体・こころに働きかけるビューティーイノベーションに挑戦し、一人ひとりの本来の美しさを引き出すことを目指す。
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