花王、ユーカリとビルベリーにオートファジー活性化作用を発見

粧業日報 2023年5月11日号 3ページ

花王、ユーカリとビルベリーにオートファジー活性化作用を発見
 花王は、オートファジーの活性が低下することにより、表皮の恒常性が損なわれ、皮膚の潤いやバリア機能を担う角層の形成(角化)が乱れることを明らかにした。さらには、オートファジーの活性を高めることで、表皮角化の恒常性が維持される可能性が示された。その結果に基づき、オートファジーの活性を高めることで、表皮角化を促進させる有望な植物エキス(ユーカリエキスとビルベリーエキス)を見出した。

 今回の研究成果の一部は、International Journal of Molecular Sciences、日本薬学会 第143年会(2023年3月25~28日・北海道)にて発表している。

 同社は、皮膚におけるオートファジー(自食作用)の機能にいち早く注目し、2010年の研究開始から、皮膚科学分野でのオートファジー研究を深耕してきた。2019年には、大阪大学の吉森保栄誉教授の研究指導のもと、ヒトの皮膚組織を用いてオートファジーの活性の定量に成功し、加齢や紫外線による光老化に伴い、その活性が低下することを報告している。

 今回は、常に古い細胞が新しい細胞と入れ替わる表皮においてもオートファジーが深く関わっているのではないかと考え、研究を進めた。

 表皮の角化とオートファジーとの関連を詳しく調べるため、肘部に乾燥やざらつきなどの肌トラブルがある30~50歳代健常人を対象とし、肘部とその周辺の腕部の皮膚を比較した。その結果、肘部において角質肥厚(角層が厚くなった状態)が認められた。また、表皮での正常な角化に重要な役割を有するタンパク質であるロリクリンとフィラグリン、LC3タンパク質を蛍光色素で染色し可視化した結果、それらの分布が著しく乱れていることがわかった。また、肘部皮膚のLC3の代謝量は腕部の皮膚と比べて少なく、オートファジーの活性が顕著に低下していた。これらのことから、角化の乱れの原因として、オートファジーの低下がその一因となっている可能性が示された。

 角化の乱れにオートファジーが及ぼす影響をより詳細に検討するため、器官培養した肘部皮膚にオートファジーを活性化させる試薬を添加し、表皮の角化の状態、角化に関連するタンパク質を可視化した。その結果、角層の肥厚が抑えられ、角化に関連する不均一だったタンパク質の分布も整った。このことから、オートファジーの活性を高めることで、乱れていた角化を整え、健全な角層を形成できることが示唆された。

 次に、皮膚に使用できる200以上の素材を角化細胞に添加し、健全な角層の形成にとって有用なオートファジーの活性化素材を探索した。

 その結果、ユーカリエキスとビルベリーエキスを同時に添加した場合に、オートファジーの活性が上昇し、ロリクリンタンパク質が増加することを確認した。これらより、ユーカリエキスとビルベリーエキスを同時に添加することで、角化が整えられることが示唆された。
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