ヒノキ新薬、「ルスツ山寮有形文化財登録記念パーティー」を開催

粧業日報 2024年9月17日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 白井晟一氏が設計した道内唯一の作品で、留寿都村で初の登録有形文化財に
ヒノキ新薬、「ルスツ山寮有形文化財登録記念パーティー」を開催

 ヒノキ新薬(阿部武彦社長)は9月2日、尻別岳山麓に位置する同社の保養所「ルスツ山寮」(北海道虻田郡留寿都村字泉川645、鉄筋コンクリート造一部鉄骨造2階建、鉄板葺、建築面積812㎡)が今年3月に建造物の有形文化財として登録されたことを記念し、「ルスツ山寮有形文化財登録記念パーティー」を同山寮で開催した。

 ルスツ山寮は、「ノアビル」(東京・麻布台)に代表されるような記憶に残る数々の作品を遺した日本を代表する建築家・白井晟一氏(1905~1983年)が設計した道内唯一の作品で、阿部社長がヨーロッパ留学中に白井氏の長男・彪介氏と知り合った縁から、札幌オリンピックが開催された1972年に竣工した。

 緩勾配の切妻造屋根を架け、濃淡に富む北海道産のレンガを活かした独特な外観と、内部吹抜に片持で薄く仕上げた踊場付階段など要所に彫塑的造形を配した施工技術が高い評価を受け、昨年11月24日開催の文化審議会にて登録有形文化財(建造物)にするよう答申された。


 記念パーティーの冒頭、挨拶に立った阿部社長は、「今からちょうど52年前の9月2日にルスツ山寮の完成披露パーティーが行われ、白井先生はもとより東京都民銀行(現きらぼし銀行)さんや大成建設さんなど、本当に多くの方々のご支援やご理解、お力添えがあって本当に立派な建物が出来上がり、私の人生の中で大きなターニングポイントになった。当時はミュンヘンオリンピックが行われていた最中で、競泳女子100mバタフライで青木まゆみさんが世界新記録を樹立し、金メダルを獲得して自分のことのように感激したこと、昭和の大横綱である大鵬関と女優の芳村真理さんが完成披露パーティーにお越しいただいたことなど、あの頃の多々ある思い出は今も色褪せることがない。早いものであれから52年が経ち、『価値ある建築であれば、登録有形文化財に申請すべき』とのお話をいただき、まさかと思ったが折角のことなので登録手続きを進め、無事答申を得ることができた。人と人との出会いを慈しみ、どのように育てていくかが人生では大切なことであり、これからもその思いを胸に皆さまと共に歩んでいきたい」と述べた。

 続いて、来賓を代表して白井晟一氏の令孫である建築家・白井原太氏(白井晟一建築研究所)と、留寿都村長の佐藤ひさ子氏、きらぼし銀行執行役員神田支社支社長の堀越洋氏が挨拶した。


 白井氏は、「登録有形文化財(建造物)はトータルで1万4000件を超え、そのうち北海道には151件あり、留寿都村として初の登録有形文化財となった。登録有形文化財は建築後50年を経過していることが1つの基準であり、今回のように建築を依頼した当時と同じオーナーが有形文化財の登録申請まで行われるケースは本当に稀だ。しかも、ルスツ山寮は登録有形文化財(建造物)トータルで最も若い建物であり、非常に貴重な建造物といえる。祖父が建築したもので登録された70件のうち、現存しているのは約半分という状況で、ただ形だけが遺っているというケースもままある。そのような中で、ルスツ山寮は建物のことを理解されている阿部社長の陣頭指揮もあって温かく手入れがなされ、単なる建造物ではなく、この場所をきっかけに人との関係性が生まれていく空間を作り出している。人の営みの中で成長していくような生きた建物として今も受け継がれ、今日この日を迎えられたことを本当に嬉しく思う」と語った。


 佐藤氏は、「登録有形文化財(建造物)に関して、後志(しりべし)管内には8件ある。そのうち小樽市が7件で、小樽市以外では今回のルスツ山寮が唯一であり、非常に貴重な建造物だ。留寿都村の一村民として、小さい頃から素敵な建物が村にあることは聞いており、今年3月にようやく約40名の村内の方々と建物の内外を拝見することができ、その佇まいと雰囲気に触れ、本当に感動した。重厚感のある歴史的建造物が留寿都村にあることは我々の誇りであり、村民との距離が縮まったルスツ山寮をこの村の文化的なシンボルとして、次の50年である100年の時を迎えられるよう、大切に慈しみを持たれて発展されることを祈念したい」と述べた。


 最後に、堀越氏は「初めてルスツ山寮を訪問し、この建物と自然の美しさに感動している。今回、有形文化財に登録されたことを記念し、いつまでも明るい灯を照らし続けて欲しいとの願いを込めて施設内に街路灯を贈呈させていただいた。ヒノキ新薬様とは東京都民銀行時代から63年以上もお取引があり、これからも変わらずに一所懸命尽くしてまいりたい」と挨拶を締め括った。

 記念パーティーの最後に行われたティータイムコンサートでは、人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽を手がけたことでも知られるすぎやまこういち氏が1972年のルスツ山寮完成後に編曲した「ルスツに集いて」が演奏され、盛会裏のうちに終了した。