カンタンに言うと
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所は10月27日、財団設立60周年記念セミナーをJP タワーホール&カンファレンスにて開催した。オンラインとオフラインのハイブリット形式で開催されたセミナーでは、「オーラル未来会議」と題し、歯科界にとどまらず各界の第1人者の講演とともにディスカッションの場を多く設け、全国の歯科医師、歯科衛生士、看護師、栄養士、介護士等、オーラルケアに携わる多職種の人々に対して「人生100年時代のお口の未来」を考える機会を提供した。
主催者を代表して挨拶した濱理事長は「ライオン歯科衛生研究所は、1964年に財団としてスタートしてから60周年を迎えるが、実はライオン歯科衛生研究所の活動は、110年前にさかのぼり、1913年にライオンの創業者、小林富次郎がライオン講演会を開始したことに始まる。日本人の生活が急速に変わっていく中、社会に広く口腔衛生の重要性を理解してもらうことが生活者への貢献になるとの考えから始めたもので、創業者の『企業活動で得た利益を社会に還元する』理念のもと、多様な口腔保健の普及・啓発活動を通じて社会に貢献してきた。口腔衛生に貢献する啓発活動は、情報が少なかった当時の日本社会において、大変重要な役割を果たしたと認識している。そして1964年、今から60年前に財団法人を設立し、現在の公益財団法人ライオン歯科衛生研究所の活動につながっていく。このように我々は創業時から一貫して、『口腔衛生』の習慣づくりに取り組んできた。
本日は『人生100年時代のお口の未来を考える1日』と題し、これからの口腔保健活動における我々の基本的な考え方について紹介させていただくとともに、これからのオーラルヘルスケアについて皆さまと共に考えていきたい。
まず、健康の入り口ともいえる『オーラルヘルスケア』という考え方について触れたい。生涯を通してオーラルヘルスケアを習慣化することは健康寿命の延伸に大きく関与する。我々は、口から全身の健康とQOLの向上を支える『オーラルヘルスケア』をすべての人々に提供し、健康寿命の延伸を通じて、子どもからお年寄りまで充実した人生を送っていただきたいと考えている。そのためには、ライフステージ毎に異なるオーラルヘルスケアの課題に最適な予防歯科習慣を実践することがとても重要だ。
我々はどのライフステージであっても切れ目なく最適な予防歯科習慣の実践ができる状態を『予防歯科習慣のゴールデンゾーン化』と呼び、ゴールデンゾーンにいる生活者を増やすことを基本的な考えとして設定している。また、この予防歯科習慣のゴールデンゾーン化には、生活者を支える様々なステークホルダーのサポートが重要だ。日々のセルフケアを適切な方法で実践する生活者にはプロケア、すなわち口腔課題の早期発見、治療とともに適切なセルフケア方法を提供する歯科医院、さらには各ライフステージにおいて予防歯科行動を助言する栄養士、看護師、保健士等の支援者のサポートが重要だ。これらのステークホルダーとともに連携して予防歯科習慣のゴールデンゾーン化を促し、お口から全身健康へ導いていきたいと考えている。
具体的な活動としていくつか紹介すると、1932年に開始した『第1回学童歯磨訓練大会』は変化する口腔課題に対応しながら、本年『第81回全国小学生歯みがき大会』として開催し、全国の小学校の3分の1の約5400校、約30万人の小学生が参加する大きなイベントに拡大している。現在はDVDによる歯みがき指導に加え、帰宅後の実践サポートや、夏休みの宿題キットなども提供し、習慣化の促進を図っている。
各ステージにおける予防歯科のゴールデンゾーン化を目指すにあたり、習慣の定着に重要な小学生期については引き続き、子どもの口腔課題の変化に対応しながら、将来に続く予防歯科行動の実践者の拡大をめざし、全国の歯科医師会、行政、教育機関との連携した活動を続けていく。また、ライフステージ毎の切れ目のない支援に向けて、妊婦~乳児向けサイト『ママあのね』を運用し、年間300万アクセスをいただいており、保護者や子どものステージに合わせた発信を進めている。成人期の取り組みとして『企業健診』に加え、セミナー等で手軽な啓発メニューを増やし、働き盛りの皆さまの興味喚起、意識醸成に取り組んでいる。そしてすべての人のオーラルケアができるよう障碍者等への啓発や、手軽にどんな世代でもできるお口の体操など独自情報を開発し、提供している。
これからも予防歯科のゴールデンゾーン化に向け、切れ目のないライフステージ毎の予防歯科啓発を進めていく。
さらに、生活者への口腔衛生の指導や支援など、歯科啓発に携わる皆さまとの連携活動を進めるために、本年から歯科衛生士の皆さんに向けた情報発信サイト『DH-STAND』、学校養護教諭や保健師など歯科啓発を支援する皆さんに向けた情報発信サイト『イーハビッツ』などHP内に職種別のサイトを展開し、皆さまが生活者へオーラルヘルスケアの重要性を手軽に正確に伝達できるよう情報やツールの発信を充実させた。また今後は本日のようなセミナーや勉強会の開催拡大と共に、昨年開設したLINE等SNSを活用したコミュニティサイトを最大限活用しながら、皆さんの声を聴き、生活者の予防歯科習慣のゴールデンゾーン化を進めていきたい」と語った。
特別ディスカッション「これを聞けばヘルスケアが分かる!各領域の最先端研究者が考える、100年時代の口腔と健康の在り方」には、講師として東北大学大学院 歯学研究科分子・再生歯科補綴学分野 教授の江草宏氏、慶應義塾大学 医学部整形外科学教室 特任講師の早野元詞氏、特別ゲストとして関根麻里氏、モデレーターとしてサルタ・プレス代表取締役・日経BP総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員の西沢邦浩氏が登壇。20年後の「口腔」と「全身」の健康へのアプローチについて活発な議論が繰り広げられたほか、関根さんからは生活者目線に立った貴重な意見が寄せられた。
このほか、感性リサーチ代表取締役社長の黒川伊保子氏による講演「歯科衛生士必見!脳科学の専門家が語る、科学的コミュニケーション」、Studio Chick 代表の片山章子氏と亀井歯科・矯正歯科院長の亀井英彦氏、感性リサーチ代表取締役社長の黒川氏による講演「現場のリアルなお悩みを解消!患者・歯科医師・歯科衛生士、全方位コミュニケーションのお悩み相談会」、早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授の宮地元彦氏による講演「食と運動と口の健康から考える!最新研究に基づくフレイル予防」、東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部の赤石定典氏、大阪歯科大学 医療保健学部 口腔保健学科 教授の糸田昌隆氏、早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授の宮地氏による講演「今までの常識が変わる!各分野の専門家と考える、フレイル予防の新しいカタチ」が行われた。
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この記事は粧業日報 2024年11月12日号 1ページ 掲載
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