粧業日報 2025年1月14日号 5ページ
カンタンに言うと
花王は、紫外線吸収剤を含まない日やけ止めにおいて、高い紫外線防御効果と、白浮きせずみずみずしい感触を両立させる新たな処方技術開発に成功した。この技術は、紫外線散乱剤(酸化チタンなど)を内包した独自のカプセルを水相に安定して分散させる新発想により実現した。
花王の調査では、日やけ止めの品質で重視したいこととして「肌にやさしい」「肌に刺激が少ない」ことをあげる人が3割以上を占めた一方、肌への負担が少ない紫外線吸収剤フリーの構成比は日やけ止め全体の1割弱にとどまる。紫外線吸収剤フリーの使用者からは、肌色に自然になじみ、みずみずしい感触で、紫外線防御効果も高いことが求められており、花王はこのニーズを叶えたいと考えた。
紫外線吸収剤フリーの日やけ止めは、紫外線散乱剤のみで紫外線防御効果を実現する必要がある。紫外線散乱剤は、反射によって紫外線が肌に到達することを防ぐ粉体で、日やけ止めに用いられるものは一般的に水に分散せず、油になじむ性質を持つ。そのため、高い紫外線防御効果を叶えるには、紫外線散乱剤を一定量配合できるオイルベースがよく使われる。油剤を増量すればするほど紫外線散乱剤を配合できるが、感触が重くなり、白浮きにつながりやすくなる。
みずみずしい使用感を得るには、ウォーターベースが適しているが、紫外線散乱剤は油滴の中にしか入れられないため、これまで紫外線吸収剤フリーの日やけ止めで高い紫外線防御効果を叶えることは困難だった。そこで今回は、紫外線防御効果が高く、白浮きせずみずみずしい感触で、毎日使いたくなるようなウォーターベースの紫外線吸収剤フリー処方の開発を目指した。
ウォーターベースの水相中に、紫外線散乱剤を入れる方法を検討し、水と油の両方に親和性を持つカプセルで紫外線散乱剤を包み込むことを考案した。目的とする紫外線防御効果を達成するために、カプセル自体の素材や大きさ、中に入れる酸化チタンなどの紫外線散乱剤の濃度や大きさについて検討・設計し、最適な「紫外線散乱剤内包カプセル」を開発。それを配合した新処方が完成した。
開発したカプセルを配合した新処方製剤と、カプセルを含まない紫外線吸収剤フリーのウォーターベース日やけ止め製剤を、皮膚表面を模した凹凸のあるプレートに塗布し、それぞれに紫外線を当て、紫外分光顕微鏡で吸光度を測定した。
その結果、新処方製剤はカプセルを含まない製剤と比較して、吸光度が高いことが確認できた。カプセルと油剤に含まれる紫外線散乱剤がすき間なく敷き詰められ、均一な塗膜を形成していると考えられる。また、新処方の製剤は、従来の処方と比較して、色の変化が少なく、白浮きが目立ちにくいことが確認できた。
今後この知見を活かし、グローバルで使用可能な原料を用いて、世界中の生活者が日々使いたくなる日やけ止めの開発に取り組んでいく。
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この記事は粧業日報 2025年1月14日号 5ページ 掲載
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