花王、湿度変化に応じて吸放湿するUV防御塗膜技術を開発

粧業日報 2025年2月19日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 空気を含んだような独特な感触と快適な使い心地で日やけを防ぐ価値追求
  • 蒸し暑い環境下で7割以上の女性が快適性を実感
花王、湿度変化に応じて吸放湿するUV防御塗膜技術を開発

 花王は、ウォーターベース(Oil in Water)の日やけ止めに、紫外線吸収剤を内包した寒天ハイドロゲルカプセルと高抱水性ポリマーを配合することで、空気を含んだような軽い感触で、外部の湿度変化に応じて塗膜が吸放湿し、快適な感触が持続する環境適応型の日やけ止め処方を開発した。

 紫外線カット効果の高い日やけ止めが多く販売されている一方で、同社の調査では、日やけ止めを塗ったにもかかわらず日やけしてしまった経験がある人は9割を超えている。その理由の1つとして、「日やけ止めは義務感で仕方なく塗る」という生活者の声があり、実使用場面の塗布量が十分でない可能性が考えられる。さらに、近年の猛暑など高温多湿となる環境下では、日やけ止めを塗った状態で汗をかくことで、多くの人が肌のムレや不快なぬるつきを感じていることもわかっている。これらの課題に対して同社は、十分な量を塗布したくなる、塗り直したくなるような使用感の実現と、ムレや汗による不快感軽減を目指し、新たな日やけ止め処方開発に取り組んだ。

 新たな独自技術では、みずみずしい使用感で高い紫外線防御効果があるウォーターベースの日やけ止めを叶えるため、ウォーターベースの水相部分に、一般的に水になじまない紫外線防御成分(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤)をカプセルに包んで水に分散させた。さらに、多くの紫外線吸収剤を入れ込むことができ、塗布時に崩壊して広がる特性を持つ寒天ハイドロゲルカプセルを用いた。この処方ではすべての紫外線吸収剤をカプセルに内包させることで、製剤の水相部分にさまざまな成分を安定配合することが容易になり、新しい感触や機能を付加できる可能性が広がるという。

 このメリットを活かし、これまで日やけ止めに使用していない高抱水性ポリマーの配合を検討した。汗やムレによる不快感を軽減するためには、湿度環境の変化に応じて塗膜自体が水分をコントロールできたらよいのではと考えた。

 多くの素材や組み合わせを検討した結果、自重の数百倍の水分を抱え込む性質を持つ高抱水性ポリマーを利用することで、追求する機能を実現できる可能性を見出した。

蒸し暑い環境下で7割以上の女性が快適性を実感

 開発した製剤が、外部湿度の変化によってどのように変化するかを確認すべく、ガラスプレートに新処方製剤と従来のウォーターベース製剤を同量塗布し、「①30分以上乾燥させ湿度を20%以下にした状態」「②その塗膜に水を噴霧し限界まで水を抱えさせた状態」「③湿度を20%以下にして60分再乾燥させた状態」の膜の厚さを比較した。

 その結果、従来製剤は水を噴霧しても膜厚の変化はなかったものの、新処方製剤は水を噴霧すると膜の厚さが増し、高い抱水性を持つ(水を多く抱えられる)ことがわかった。また、再乾燥後には膜が薄くなったことから、新処方製剤の塗膜は外部環境に応じて吸放湿することが考えられた。

 さらに、密閉空間で相対湿度を21%から88%に変化させた際の塗膜の重量変化を測定したところ、相対湿度が88%の時に新処方製剤は従来製剤の最大2倍以上の高い吸湿性を持つことが明らかになった。これにより、塗膜が汗を吸収することで、蒸し暑い環境でも、ムレや不快感を感じにくくなると考えられる。

 花王は2024年5~6月(最高気温の平均27℃)、20~50代女性42名に、新処方製剤を使用する調査を実施した。蒸し暑い環境での肌のべたつきについて尋ねたところ「日中の肌が快適な感じ」と回答した人が7割以上だった。

 花王は今回、寒天ハイドロゲルカプセルの特性である崩壊性と高抱水性ポリマーの相互作用を利用し、製剤の形状を日やけ止めとしては珍しい空気を含んだような半固体に調整した。この半固体の製剤は、塗布時の軽い力で、含んでいる水を一気に吐き出しながら素早く液体に変化することをレオロジー評価で確認した。

 日やけを防ぐには、十分な量をきちんと塗布し、適宜塗り直すことが推奨されているため、生活者が進んで使いたくなるようなユニークな感触を実現することも、日やけを防ぐ価値に貢献できるとしている。

 今回は、紫外線吸収剤を内包した寒天ハイドロゲルカプセルと高抱水性ポリマーをウォーターベースに配合する日やけ止め新処方を開発し、外部環境の湿度変化に応じて吸放湿性をもつ塗膜と塗布時に半固体から液体に素早く変化するユニークな感触を実現した。今後はこの知見を活かしながら、使いたくなる感触を実現することで、日やけ止めの十分な量の使用を促し、さらに「日やけしない実感」を追求する処方開発に取り組んでいく。

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