ライオン、画像認識AIでニキビの原因菌を可視化する新技術を開発

粧業日報 2025年2月26日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 毎日のニキビ予防ケアの効果実感向上を目指す
ライオン、画像認識AIでニキビの原因菌を可視化する新技術を開発

 ライオンは、東京電機大学との共同研究により、画像認識AIを用いてニキビの原因菌である「アクネ菌」を可視化する新技術を開発した。自然光のもとで一般的なカメラを用いて撮影した顔の画像に、車の自動運転などに用いられる画像認識AIを新たに活用することでアクネ菌を可視化できるという。

 将来的には、スマホで撮影した画像を使ってアクネ菌が増殖する兆しを日常的にチェックし、ニキビ予防に向けた睡眠、食事、運動などの生活習慣を見直すきっかけを提供することを目指す。なお研究成果は、2024年12月発行の「日本顔学会誌」に掲載された。

 ニキビは、皮脂の分泌亢進、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖、それにともなう炎症によって生じる。炎症がひどくなるとニキビが重症化したり痕が残ったりするため、アクネ菌が増殖する兆しを把握することが重要だ。現在、一部の医療機関やエステティックサロンでは、特別な装置を用いてアクネ菌を可視化し、ニキビの治療や予防の効果を評価している。これらの装置は、アクネ菌の代謝産物(ポルフィリン)が紫外光を当てられると赤色の蛍光を発する特性を利用しているが、これらの特別な装置を備えた施設は限られており、顔に紫外光を照射することに対して心理的な抵抗を感じる人も少なくない。

 そこで同社は、画像処理や生体認証に関する研究で実績のある東京電機大学との共同研究を通じて、自然光のみでアクネ菌を可視化する新たな技術の開発に取り組んだ。

 具体的には、2つのステップでアクネ菌の可視化技術を開発した。

 ステップ1の学習フェーズでは、「①車の自動運転などに用いられる画像認識AIを基に、顔の画像からアクネ菌の存在する箇所を自動で判定するAIモデルの開発(未学習AIモデル)」「②未学習AIモデルに、自然光で撮影した顔の画像と、紫外光で撮影しアクネ菌の代謝産物を赤く発光させた顔画像の学習(学習済みAIモデル)」に取り組んだ。

 続くステップ2の利用フェーズでは、「①学習済みAIモデルに自然光で撮影した画像を入力し、紫外光による撮影を再現した画像を生成(生成画像)」「②紫外光で撮影した画像と生成画像中の赤色の強さを測定し、アクネ菌の代謝産物をスコア化し比較」といったプロセスを経て、各画像の全ピクセルから赤色の強度を抽出し、その値を合計して比較した。

 紫外光で撮影した画像と生成画像中の赤く光るアクネ菌の代謝産物をスコア化し、スコアを比較した結果、相関性があることを確認した。以上の結果より、同社は画像認識AIを活用し、自然光のみでアクネ菌を可視化する新技術の開発に成功した。

 将来的には、この技術をスマートフォンカメラに対応させ、肌状態を簡便にチェックできるようにすることを目指す。毎日のニキビ予防ケアの効果を手軽に確認できるようにすることで、生活習慣の改善やスキンケアのモチベーション向上につなげる。さらに、肌状態と睡眠、食事、運動などの生活習慣データを関連づけることで、生活者一人ひとりに最適な生活習慣改善のアドバイスを提供し、より効果的なニキビ予防ケアの実現に貢献していく。

 その一環として、ニキビの予防から治療をより効果的にサポートするサービスの開発を進めている。2024年9月から開始したiPhone向け調査用アプリケーション「大人のニキビ予防習慣研究所」を通じて、ニキビの発症と生活習慣の関連性を研究している。研究結果に今回のAI技術を組み合わせることで、日々の肌状態の変化を視覚的に確認しながら、ニキビ予防ケアを実践できる生活習慣提案サービスの構築を目指す。

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