カンタンに言うと
日本精化では、成長戦略の柱の1つである「リン脂質」を中心に、サステナブルでありながら機能性に優れた原料や処方を提案している。直近ではリン脂質素材「Phytocompo」シリーズにおいてW/Oエマルション処方の調整が可能であることを発見し、提案の強化を進めている。設備面では、2024年4月に本社ビル1階にラボを設置した。顧客の要望に合わせて随時受け入れを行っており、実験スペースにて実際の処方を見せながら、顧客が抱える課題の解決に向けてサポートしている。
日本精化は、ビューティケア事業の第3四半期の売上が前年比11%増と、好調な動きを見せている。
同社が成長戦略の1つとして掲げている「リン脂質素材」は、現在国内を中心に提案を行っている。
リン脂質素材は同社を代表する素材で、化粧品原料としてはリポソーム基材や乳化剤で使用される。一般的に乳化剤は油相と水相を乳化するために使用するものでスキンケア要素を持たないが、リン脂質素材は細胞膜を構成する成分であるため、一般的な乳化剤と比較して安全性が高く、肌なじみも良く、べたつかず心地よい使用感が特長となっている。
天然乳化基材「Phytocompo」シリーズからヘアケア用の「Phytocompo HS」を最近リリースしているが、インバストリートメントを作る際に一般的に使用されているカチオン界面活性剤の代替素材として使用することもできる。カチオン界面活性剤は、乳化基材や質感稿以上が可能な反面、頭皮のかゆみや刺激につながりやすいことも知られている。Phytocompo HSは、カチオン界面活性剤が担う乳化剤の役割と質感調整を担うことができ、かつ前述のリン脂質の機能により、頭皮や背中、手への刺激のリスクも非常に低い特長を持つ。
2024年冬には、「Phytocompo」シリーズでW/Oエマルション処方の調整が可能なことが分かった。
W/Oエマルション処方は、一般的にシリコーン系の乳化剤が使用されるケースが多いが、シリコーンの使用感が前面に出てしまい、使用感触にバリエーションを持たせることが困難な側面がある。
近年では、シリコーンを使用せずに製品を作る「脱シリコーン」の傾向も強まってきていることから、リン脂質素材で同様の処方が可能となることで、より軽い使用感での製剤作りの実現が期待できるとともに、皮膚科学とトレンドにマッチした製剤技術として提案する。今年5月に開催される「CITE JAPAN 2025」でもその効果を展示ブースで体感できるよう、現在準備が進められている。
一方、リン脂質素材と同じく成長戦略の柱の1つである「機能性油剤」が、欧米を中心に好調な動きを見せている。
同社の機能性油剤は顔料との相性が良く、ツヤや密着性を付与する特長を持つ。コロナ禍以降、欧米のメークトレンドがツヤに変化していることで需要が大幅に拡大し、売上増につながった。サステナブル化の進む欧米市場に対応した製品紹介を進めたことも一因と言える。
今後も海外の展示会への出展を通して、積極的な提案を進める。機能性油剤は欧米を中心に需要拡大の継続が見込まれているが、アジアでの提案活動も行っている。特に中国では、リン脂質素材に加え機能性油剤に関するセミナーも頻繁に実施している。
「中国はまだ景気が良くなったとは言えない状況にあるが、将来市場が回復したときに備えて、手を緩めることなく取り組みを続けていく」(同社)
2024年4月、本社ビル1階にラボ(The Design & Creation Lab.)を開設した。実験用のスペースと座学用のスペースがそれぞれ設けられており、常勤する研究員による実習つきセミナーや、クライアントの課題に合わせた処方提案を行っている。オンラインにも対応しており、実験の様子をウェブカメラで鮮明に映しながら解説することができる。
現在は顧客からの要望を受けてラボに招き、処方の提案を行う形式が中心になっていることから、化粧品開発研究員や原料代理店の訪問が多い傾向にある。今後は同社からの情報発信の場としてもラボを活用するべく、オンラインツールの強化と研修プログラムの作成が進められている。
オンラインツール強化の背景には、同社の海外戦略がある。現地で技術的な説明を求められた際の対応として、瞬時にオンタイムでラボと接続し、リアルタイムで実演できる体制づくりを目指している。時差によりリアルタイムでの接続が難しい場合に備えて、動画コンテンツの作成にも取り組んでいる。
研修プログラムは、他社も含めた新入社員への教育の場としての活用を想定しており、テキストや資料映像の作成を進めているという。
「研究員として化粧品業界に入ると、専門知識について学ぶことのできる新入社員向けの大規模なセミナーがいくつか開催される。その後にラボを訪れていただき、実際に販売できるような処方を一緒に作っていくことで、セミナーで学んだ多くの知識をアウトプットできる場としても活用していきたい」(同社)
この記事はC&T 2025年3月17日号 80ページ 掲載
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