花王、地下トンネル内の鉄バクテリア由来サビ色汚泥を一掃

粧業日報 2025年4月23日号 2ページ

2025年4月23日 13:00

粧業日報日用品メーカー

カンタンに言うと

メンテナンス負荷を低減する汚泥除去剤「ルナクリア」を開発

　花王は、鉄バクテリア由来の汚泥を取り除く産業用除去剤「ルナクリア」を2025年6月から発売する。地下トンネルでは、鉄バクテリアによってサビ色の汚泥が発生するが、放置すると景観を損ねるだけでなく、排水溝が詰まって設備に悪影響が及ぶため、従来は手作業で定期的に取り除いていた。

　吹きかけるだけで汚泥を溶かし、簡単に除去することができる「ルナクリア」はすでに鉄道会社での採用が決定しており、今後は同じような悩みを抱える企業にも提供していく。

　鉄バクテリアは土壌中に広く生息する無害の微生物で、地下水など水中の鉄分を餌にして多量の汚泥を生じさせる。汚泥は、景観を損ねるだけでなく、蓄積して排水溝が詰まることによって周辺設備の故障や劣化などの悪影響を及ぼすことがあり、定期的な除去作業が大きな負担となっている。鉄バクテリア汚泥は柔らかい粘土のような半固形状のため、水をかけただけでは落とすことができず、今までは手作業で取り除くしかなかった。

　そこで花王は、簡単かつ短時間で汚泥を除去できる除去剤の開発に取り組んだ。

　鉄バクテリア汚泥は、泥の粒子が集まって網目のようなネットワーク構造を形成していることが知られており、ネットワーク構造を断ち切れば、形を保てずに軟らかくなると推測し、汚泥に作用して構造を壊す成分を選定。さらに、発泡する仕組みを加えて軟らかくなった汚泥を浮き上がらせることで、吹きかけて、水で流すだけで汚泥を除去できる産業用の除去剤「ルナクリア」を開発した。製品は天然由来の原料を用いており、環境へ配慮した設計となっている。

　地下トンネル内はスペースが限られているため、作業員が手動で使用できるように、花王の日用品でも使用しているフィルム容器（ラクラクecoパック）を採用し、専用のデバイスも開発した。この仕様にすることで、軽量で持ち運びや使い勝手に優れているだけでなく、プラスチック使用量を大幅に削減できる。

　今後は、地下の鉄道トンネルだけでなく、山岳トンネルなど幅広いインフラメンテナンスへの活用を促していく。また、鉄バクテリアは鉄製の配管やタンクといった鋼材設備の腐食にも大きく関わっているため、この技術を応用した幅広い用途展開にも取り組んでいく。