花王、皮脂RNAを元に肌タイプを顔画像から推定するモデルを構築

カンタンに言うと

  • 誰でも手軽に客観的な肌の指標を利用することが可能に
  • 自分に合う商品を選択できる仕組み構築や次世代サービスの開発を推進
花王、皮脂RNAを元に肌タイプを顔画像から推定するモデルを構築

 花王は、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂中に含まれるRNA(皮脂RNA)発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できるモデルを構築した。

 今回開発したモデルは、RNAを直接採取・解析する必要がないため、RNA解析に要する時間、高額な費用がかからず、生活者が場所を選ばずにRNA発現情報に基づく肌タイプを利用することが可能となる。

 今後は、RNAという客観的な生体指標を共通のモノサシとして社会で広く利用しやすくすることで、生活者が自分に合う商品やサービスを効率的に選択できる仕組みづくりに貢献していく。

 ネット上では多種多様な化粧品情報があふれているため、美容サイトのクチコミ評価を参考にして化粧品を選ぶ生活者は多いものの、同じ商品でも人によって評価が分かれ、自分の肌に合うかどうか悩ましいことが多々ある。その理由の1つとして、体や肌の特徴が個人で異なることがあるため、個人の体や肌の特徴を表す客観的な指標があれば、生活者が商品を選択する際に役立つと考えた。

 花王は、2019年に皮脂中にRNAが存在することを発見し、あぶら取りフィルムで肌を傷つけることなく顔の皮脂を採取して、そこからRNAを抽出して網羅的に解析する「皮脂RNAモニタリング」技術を開発した。さらに、皮脂RNAの発現情報を類似度により分類することで、「免疫」「角化」など皮膚の機能に重要な遺伝子の発現特徴が異なる、少なくとも2つの肌タイプが存在することも発見した。RNAは、体調や食生活といった環境要因によって日々変化するため、その時の肌状態を知るのに有用であることから、花王ではRNA発現情報に基づく肌タイプは生活者が商品を選択する際の客観的な指標の1つになりうると考えた。

 皮脂RNAは、非侵襲で場所を選ばず採取できる利点があるものの、解析には1週間程度の時間と高額な費用が必要で、より多くの人に手軽に使ってもらうには課題があった。そこで花王は、この課題を解決するために、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できる技術開発に挑戦した。

自分に合う商品を選択できる仕組み
構築や次世代サービスの開発を推進

 技術開発ではまず、顔の見た目から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを推定できるかどうか確かめるため、2つの肌タイプの顔画像を検証した。

 日本人女性343名を対象に、皮脂RNA解析で肌タイプを判定し、その後カメラと被写体の距離や照明環境を一定にして素顔の写真撮影を行い、見た目に表れる特徴を比較した。その結果、肌の色や形状のいくつかの観点で、2つの肌タイプの顔画像に統計的に優位な違いがあることがわかった。

 花王は、実際の運用を想定し、スマートフォンで撮影した日本人女性3248名の素顔写真で検証を進めた。皮脂RNA解析で肌タイプを判定し、その後異なる2つの条件で学習させて、AIモデルを構築した。

 1つ目は、事前の検証で見出した肌の色や形状の特徴から肌タイプを推定する機械学習モデル、2つ目は、顔全体の画像から肌タイプを推定する深層学習モデルで、それぞれが異なる視点で学習を行うため、2つを組み合わせることで弱点を補完できると考えた。それぞれのモデルが、どのくらい肌タイプを当てられるか検証した結果、組み合わせたモデルで最も高い正解率67%が得られ、顔画像から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプの推定が可能だということがわかった。

 今回、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できるモデルの構築に成功した。

 今後は、このモデルによって推定される皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプという客観的な指標を使って、生活者が自分に合う商品を選択できる仕組みの構築、次世代サービスや商品の開発、提案などを推進していく。


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