既存原料については種々の安全データの整備を
新規原料は環境重視した機能性素材の開発推進
化粧品原材料にとりまして、この10年は変化が大きかったと言えるでしょう。
まず、化粧品原料の規格に関する環境が大きく変化しました。かつては、化粧品に使用する原料は、化粧品原料基準や種別許可基準の規格に適合した原料でなければ、使用できなかった時代が長く続いたのです。2000年の全成分表示を境に、許可認可制度から自由に使用できる申請制度へと変化していきました。このとき、化粧品原料基準は、廃止され、表向きは化粧品会社が自由に原料を使えるかに見えました。当時は、輸入原料が大量に導入される可能性が高く、価格競争が激しくなると考えていましたし、また、新規の原料も自由に使用できるのではないか? とも考えておりました。
しかし輸入原料は、基礎的な原料で増加してきたようで、国内原料も、従来の規格に適合した原料が品質の安定性や安心感から使用され続けています。
今後も、輸入原料と国内原料とは、バランスを保ちながら、使用され続けていくと考えております。
原料では、動物由来、石油由来から植物由来への流れが続いていると思います。植物由来の脂肪酸、脂肪酸誘導体、高級アルコールなどの製品製造量が増加してきました。
これら植物由来素材を活用して原料各社より特徴のある化粧品原料の新製品が製造されてきたように思います。このような背景から、 弊社でも新規原料開発を積極的に行ってきました。
リソカスタDA、ハイルーセントISDA、ハイマレートPAM、NPDIN、ハイシュガーケンBGなどの商品をここ数年継続して開発してきております。これらの新規原料は徐々に市場に浸透し、一定の成果をあげてきていると思います。これら開発の過程で種々の技術的ノウハウの蓄積ができたことが良かったのではないかと考えています。データの蓄積と解析から今後も新製品の投入をしていきたいと考えております。
安全性については、種々の問題発生するも1つ1つ丁寧に対応
化粧品原料に関する安全性については、種々の問題が発生し、それぞれ対応されてきたように思います。GMOへの懸念、環境ホルモン関連の懸念などがおこりました。GMO原料が入っていないとの証明、環境ホルモンが入っていないという証明は弊社のような油脂由来原料では分析・テスト方法や安全性の基準値がはっきりしませんでした。
BSEの問題は大きく、特に、化粧品原料の中国への輸出の際の安全性確保の問題となり、対応に苦労させられました。BSEの原因のプリオンタンパクの不活性化の証明に具体的な分析・テスト方法・基準値がはっきりせず、製造工程の証明が必要というものであったため、原料供給メーカーまでさかのぼっての書類請求となり、時間も手間もかかり苦労させられました。
一方、ジエチレングリコールのグリセリンへの混入の疑いの問題では、GC分析により確認され、安全性が証明できました。最近の農薬汚染米やメラミンの混入の問題でも分析方法の存在が非常に重要になっていると考えます。
化粧品原料の安全性確保に必要な問題においては、その分析方法や基準値あるいは安全性を確保するための数値が重要であり、これらがはっきりしない場合は、概念になるため、対応が十分できない場合が出てきて苦労させられます。
REACH規制の影響で今後は環境問題が焦点に
今後は、化粧品原料も環境問題が重要になってくると考えられます。たとえばEUのREACH規制などは、化粧品原料の今後へ影響が大きいと考えられます。
EUのREACHへの対応は、2008年11月末までの予備登録および今後の本登録と続き、EUでの使用量1トン以上の化粧品原料は、猶予期間中に安全性データの自社資料の整備が求められます。弊社では既存の原料ほど、自社データが未整備であるので、今後の課題となっています。
このREACH規制の本質は実は世界共通の環境問題への対応であり、日本・アジアや米国も無視できる問題ではありません。
このような化粧品原料を取り巻く環境の中で、弊社では、日本、米国、ヨーロッパが化粧品原料でもっとも重要と考えておりますので、既存の原料については種々の安全性データの整備を、新規原料については、環境への安全性を重視した機能性素材の開発を続けていくことを考えております。
とくに、リヨンに設立した現地法人の活用が重要になってくると考えております。EU地域でのユーザーの要望を満たし、販売を確保促進すること、EU地域ばかりでなくロシアや東欧での市場調査、顧客情報の整備、既存品の販売だけでなく、新製品の開発や販売体制を築いていく方針です。
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この記事は週刊粧業 2008年10月27日号 掲載
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