【週刊粧業2016年3月7日号5面にて掲載】
私はどんな化粧品を使用しても、めったに肌あれしたという経験がない。そのため若い頃から「自分は健康な肌だ!」と思い込んできた。
ところが最近は老化が深刻になってきたということもあり、合うものとそうでないものがはっきりしてきた。そのように感じ始めると、「合うもの」に対する基準が途端に厳しくなって、なかなか自分に対する「イチオシ」製品が決まらない。
どんな小さなことでも気になり、「もっと良いモノがあるはず」というジプシー状態から抜け出せなくなっているのだ。
私の身近な友人・知人の女性たちも、そんな悩みを持つ人が多い。一方で化粧品業界の大御所たちの中には「将来、1人ひとりのお客様のアドバイザーとなって、トータルで美容をサポートしたい」という夢を語る人もいる。
よく考えてみれば、美容は1人ひとりのお客様によって、様々なお手入れ方法があり、製品の選択肢もとても幅広い。究極の1 to 1マーケティングを実施しようとすれば、「オーダー化粧品も当然」となってくるのかもしれない。
しかし今すぐにそれが不可能だとすれば、せめて販売時点だけでも、ジプシー状態に陥っているお客様に、適切なアドバイスができる体制を整えたいものである。
本来は最前線にいる販売員たちが、メーカーの枠組みに左右されず、国内外のあらゆる製品を熟知し、また使用&体感して、その経験を基にアドバイスしてくれたらどんなに心強いかと思う。
夢のようなアドバイスが可能なら、まずは私の住まいの気候風土を把握して季節ごとのアドバイスをきめ細かくして欲しい。そして私の現在の肌悩み、つまり自分の肌への不満をじっくり聞いてくれて、肌質をチェックして、知りうる限りの製品の中から私に合う製品を選んで欲しい。
同時に私の生活状態をよく理解し、どんな時にお手入れの時間を確保できて、どんな時はスピーディーに済ませたいか、という気持ちと生活に合わせたお手入れ方法を伝授するとともに、5年後、10年後の私がどんな肌状態になるかを予測して欲しい。
こんなコンサルタントのようなアドバイザーがいたら、多分その人の言うことを信じて、教えられたお手入れを実行するに違いない。もちろん高いアドバイス料金は払えないので、できる限り安く、私の化粧品予算の範囲内でできれば嬉しい。
もともと化粧品の販売は、このようなお手入れのコンサルティング販売が基本だったのではないかと思う。ところが何時の間にか販売現場は、プロダクツとしての化粧品の売り込みに追われて、大切なアドバイスがなおざりになってしまい、お客様にも煙たがられる存在になってしまったのではないか?
1人ひとりのお客様の肌状態は、健康状態と同じで条件が全く異なる。そのようなお客様に、1 to 1で対応するなら、販売現場でのアドバイス力を復活させる以外にないと思う。
そのために時間を費やし、教育訓練にどれだけ投資しているかということが、これからの企業力の差になってくると思う。