日本能率協会が実施する中国ミドル市場開拓のためのセミナーとは

カンタンに言うと

日本能率協会が実施する中国ミドル市場開拓のためのセミナーとは

 日本能率協会はさきごろ、 年平均10%前後の高成長を続ける中国経済を牽引している中間所得層 (5000ドル以上の可処分所得を有する層、 全人口の約4分の1) にスポットを当て、 こうした層の開拓に意欲的な企業 (経営者・戦略スタッフ) を対象に、 「中国ミドル市場開発研究会」 (全3回) の第1回会合を開催した。

 第1回目となる今回は、 富士通総研経済研究所主席研究員の金堅敏氏を講師に招き、 「中国のミドル市場開拓戦略と日系企業」 と題した講演が行われた。なお講演は、 「中国経済の持続可能性」 「拡大する中国市場と日系企業」 「総括」 の3つに分けて行われた。

 金氏はまず、 「外需主導から内需主導へ舵を切っていること」 「国民・政府・企業を合わせた国内総貯蓄率が50%超と他国に比べて突出して高いこと」 「都市化が競合国 (ブラジル・コロンビア・韓国・インドネシア) に比べ遅れていること」 の3点を指摘し、 「中国経済の持続可能性」 について次のように言及した。

 「中国市場の中で小売業はここ数年、 GDPの成長率よりも高い15%程度で伸長し続けている。 個人も企業も政府も十分な資金供給能力があるため、 インフラなどの社会整備は未だ国力に追いついていない状況だが、 自国の資金で十分整備できる状況となっている。 経済の持続可能性についてかなりのポテンシャルを持っている」 (金氏)

 中国政府はさらに、 「3年間で約1250億ドル規模の医療制度整備」 「農村義務教育の無料化 (約1000億元の家計軽減)」 「公共性住宅の整備」 「自動車購入の補填」 「資本市場の活性化対策」 に取り組んでいる。 こうした経済対策が着実に成果を上げ、 消費マインドが喚起されているため、 前述の 「GDPより高い率での個人消費拡大が起こっている」 (金氏) とまとめた。

 中国市場の将来性について金氏は、 「都市化」 「産業高度化」 「経済のエコ化・サービス化」 の3本柱を支えるための投資需要が生まれることや、 「収入増」 「支出コスト削減」 「格差解消」 で抑制された消費マインドが喚起されること挙げ、 「慎重的楽観論」 を主張した。

  「中国では、 都市インフラ整備やサービス分野への投資が高い経済成長に追いつかない状況で推移してきた。 そのため都市化率は、1990年代から年1Pずつ増加してきたものの、現在、45%程度にとどまっている。今後は年1.5Pと増加に拍車が掛かることが予測される。これまでは外需主導で成長してきたが、今後はそれが期待できない。 これまで内需の開拓がお粗末であったことがかえってこれからの成長余地を大きくしていると言えるのではないか」 (金氏)

今後5年間で1億5000万人増加するミドル層の開拓が鍵に

  「拡大する中国市場と日系企業」 と題した演目では、 近い将来世界最大の消費国になる中国において、 従来の輸出というスタイルではなく、 「現地法人を設立し国内企業として経営していくこと」 や 「現地法人と提携しその後ろ盾をもとに事業を展開していくこと」 の必要性を指摘、 「輸出による成長戦略を転換すべき」 という持論を展開した。

 さらに、金氏は中国のポテンシャルをあらわす指標として、「中国の所得別人口構成の推移」 を説明した。ここでいう、高所得層、ミドルクラス、低所得層は、年間可処分所得で、3.5万ドル以上、5000~3.5万ドル未満、5000ドル未満を指す。

 それによると、2003年に高所得層 (664万人)、 ミドルクラス (1億1372万人)、 低所得層 (11億7209万人) だった構成比がわずか5年後の2008年には、 高所得層 (1859万人)、 ミドルクラス (4億4356万人)、 低所得層 (8億6587万人) へと大きく変化している。

  「このままの推移でいくと、2013年には中国におけるミドルクラスの人数は6億人を突破するのではないか。これは世界のミドルクラスの人数の約半数に匹敵する。高所得層についても現在の約3倍である6000万人に達する公算が高い」 (金氏)

 こうした人口構成の変化を踏まえ、「拡大が見込めるミドル市場を開拓したければ、今までのブランド・チャネル政策は抜本的に見直す必要がある。ただし、打ち出し方を間違えると、ブランド価値が低下してしまう。一方、高所得層も人数自体は増えているため、その層だけに焦点を絞り付加価値のある製品・接客・サービスで勝負していくことも政策として間違いではなく、そのやり方は否定しない。中途半端にその両方を取りにいくことが命取りになる」(金氏) と、今後の事業戦略のヒントを授けた。

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