資生堂、肌・身体・心の関係性に基づく新規肌予測モデルを開発

粧業日報 2023年10月2日号 1ページ

2023年10月2日 12:00

粧業日報制度品メーカー化粧品の研究開発

カンタンに言うと

一人ひとりの自分らしい美への道標となる独自アルゴリズム構築へ応用
肌・身体・心の関係性を解明し数式として可視化することに成功

　資生堂は、国立研究開発法人理化学研究所（理研）との共同研究で、肌の状態に関係する身体や心の状態を網羅的かつ定量的に明らかにし、革新的な肌予測モデルを開発することに成功した。また、この新たな肌予測モデルと、同社がこれまで100年以上にわたり蓄積してきた研究知見を融合し、独自の美のアルゴリズムを構築した。

　将来的には2000以上の肌・身体・心の関係性を含むアルゴリズムへと進化させていき、生活者一人ひとりの「なりたい肌」「ありたい姿」を実現するために、化粧品によるケアに加えて、身体や心の状態に着目した生活習慣の提案など、肌・身体・心が調和した状態へ導く新たなアプローチの開発を加速させることが期待できる。

　さらに、このアルゴリズムは、社会の変化やそれとともに変わりゆく生活者のライフスタイルを反映しながら、社内外におけるさまざまな最新の研究成果を取り入れて進化し続けていく。

　資生堂は、2030年のビジョンとして、生涯を通じて一人ひとりの健康美を実現する「Personal Beauty Wellness Company」を掲げ、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指している。ビジョン実現のために、同社は、肌・身体・心のつながりを解明し、現状の肌状態の改善や将来の肌予測だけでなく、化粧品にとどまらないアプローチで肌の不調を未然に防ぐことにも貢献し、「体内から健康美肌を実現する」Beauty Wellnessイノベーションの創出を加速している。

　研究開発においては、同社が長年強みの研究領域である感性研究において追究してきた「心の状態を可視化」する技術を採り入れた研究を推進するとともに、データサイエンスの手法を採り入れた解析を外部と連携して強化している。

　後者については、肌・身体・心を科学する研究の推進や社会実装を目的として、国立大学法人弘前大学と共同研究講座を開設したほか、研究で得られる大量のデータに対してスピーディーに精度高い解析を進めるべく、DeNAライフサイエンスとデータ解析に関する包括連携協定を締結するなどの取り組みを行っている。

　今回、これらに関連する取り組みの成果の1つとして、肌・身体・心の関係性を解明し、その知見を含む美の独自のアルゴリズムを構築した。

肌・身体・心の関係性を解明し

数式として可視化することに成功

　今回、肌・身体・心の関係性を明らかにすることを目的に、個人の健康度をさまざまな指標から可視化する「健康関数」開発などの研究実績をもつ理研生命機能科学研究センターの水野敬上級研究員らのチームと共同研究を行った。

　20～40代の健康な日本人女性を対象に研究を実施し、シミ・くすみ、しわ、うるおいなどの肌の状態を計測したほか、体格・体組成、血中成分、生活習慣・心理指標に関する計測も行った。肌の状態に、身体や心のどのような要素が関連しているのかを明らかにするために、計測した肌指標を身体指標や心の指標で説明する数式（新規肌予測モデル）の作成を試みたところ、複数の数式を得ることに成功した。

　たとえば、肌の角層水分量に関しては、角層水分量の多さ/少なさには、身体の酸化ストレス状態、体格、血中電解質（ミネラル）、握力などとの間に関係がみられることが明らかになった。肌の状態に関係する身体や心の状態を網羅的に、かつ定量的に明らかにする試みは前例が極めて少なく、今回得られた知見は非常に新規性の高い知見といえる。

　資生堂は、今回理研との共同研究によって得られた肌・身体・心の関係性についての知見を原点としながら、同社が100年以上にわたって蓄積してきた知見を融合して構築した独自の美のアルゴリズムを通して、肌・身体・心の関係性を定量的に捉えることにより、生活者が自分の肌への理解を深められる測定技術や、これまで以上に精度高く、生活者一人ひとりの「なりたい肌」「ありたい姿」を実現するためのケアの開発・提案に取り組んでいく。

　アルゴリズムは、社会の変化や、それとともに変わりゆく生活者のライフスタイルを反映しながら、今後新たに社内外で明らかになっていく最新の知見を取り入れつつ、将来的には2000以上の肌・身体・心の関係性を含むアルゴリズムへと進化を図っていく。