コフレ・プロジェクト、震災被災地女性を「化粧品を通じた心のケア」で支援

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コフレ・プロジェクト、震災被災地女性を「化粧品を通じた心のケア」で支援

 日本で余った化粧品を途上国に届け、現地でメイクのワークショップを開催するなど、化粧品を通じた社会貢献活動を展開しているコフレ・プロジェクト(向田麻衣代表)が、東日本大震災の被災地で同様の活動を繰り広げている。

 同プロジェクトに寄せられた化粧品の総数は1万個以上(40社)にのぼり、これまで4回に渡って被災各地に届けてきた。メイクアップ講座やチャリティーコンサートも実施し、被災者の心のケアにも努めている。これまでの活動について、向田代表に聞いた。

〝化粧品はニーズが高くても届かない〟
阪神大震災の教訓受け、迅速な実施へ

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 向田さんは宮城県仙台市出身。叔父と叔母が、甚大な被害を受けた同県石巻市で呉服屋を営んでいる。

 地震発生から約2週間後の3月26日、向田さんはマスクや下着、生理用品、オムツ、ホッカイロなどを携えて初めて石巻市に入った。このときは「とにかくどうなっているのか、この目で確認したかった」との思いが先行したが、同時に「化粧品のニーズがあれば私はすぐに動ける。そのタイミングを掴もうとも思っていた」という。

 実は現地入りする前から、向田さんは被災地に化粧品のニーズがあることを想定していたという。それは、コフレ・プロジェクトの〝サポーター〟として活動を支援してくれているアイスタイル代表(アットコスメ主宰)の山田メユミさんから以前、「阪神大震災のときに、女性のニーズが高くてもなかなか届かなかったのが化粧品だった」との話を聞かされていたからだ。

 化粧品は〝贅沢品〟と思われがちであるため、「今回もおそらく、(支援が)後手後手になって届かないことも想定できるなと思っていた」という。

 向田さんが現地に入った際、石巻市の各家庭や避難所には、水や食糧といった最優先の支援物資が徐々に行き渡りはじめ、東京・東北間の交通網にも大きな問題が生じていないことがわかったため、化粧品を届けられる環境が整備されていると判断。加えて、「基礎化粧品ほしい?」と叔母に尋ねた際に、「すごく欲しい」と懇願されたことから、活動の開始を決断した。

 自身のツイッターや、女性雑誌「25ans(ヴァンサンカン)」(アシェット婦人画報社)編集部の呼びかけなどにより、約1週間しかなかった化粧品の募集期間に計40社のメーカーからサンプル品を含めると1万個以上の製品が寄せられた。段ボールにして約200箱分。向田さんは「ものすごい量で、びっくりした」と反響の大きさに驚きを隠せなかったようだ。大手から中小メーカーまで、同時多発的に集まった膨大な化粧品はその後、計4回に渡って石巻市を中心とする被災各地に届けられた。

寄付は外資系メーカーが目立つ、
被災者に届けるインフラ機能担う

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 「Make-up Caravan」。こう名付けた支援活動の第一弾として、向田さんは数人の友人を引き連れ、4月12日に石巻市を訪ねた。段ボール50箱分の基礎化粧品を地域の被災住民に配布。これが「非常に喜ばれた」ことから、1週間後の19~20日に再び現地に旅立つ。今度は、1000人ほどの地域住民が避難する石巻市立湊小学校に向かった。このときも段ボール50箱分を運び、避難所の人たちは「大喜びだった」という。

 湊小学校で避難生活を送る被災者たちには当時、基礎化粧品の物資支援は行われていなかったという。しかも、「被災者のみなさんは『化粧品がほしい』とは言いづらい」のだそうだ。

 「私たち東京から見ると、すべてが同じ被災者と思いがちだが、被災者の中でも家が全壊した人やそうでない人がいる。また、ある所には食糧が行き届いていても、そうでない場所や地域がある。自分よりも大変な思いをしている人がいる中で、『化粧品がほしい』とは口に出せない」

 今回、ツイッターによる呼びかけなどに反応し、瞬時に寄せられた化粧品には、「外資系メーカーからの寄付が目立った」という。「東北への物流ラインがなく、状況把握もしづらい中で、大々的な物資・資金提供は難しいが、例えば1000個単位でなら支援したいとか、そういうニーズが大きかった」からだ。そのインフラをコフレ・プロジェクトが見事に担ったわけだ。

メイクのワークショップで前向きなコミュニケーション

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 その後も活動は続く。3回目の被災地訪問は、大型連休中の5月3~5日。再び石巻市を訪ねた。その際は、化粧品の配布とともにプロのメイクアップアーティストとモデルの協力により、メイクのワークショップを実施し、震災直後、津波で商品が流され、汚泥でまみれた叔母の呉服屋を会場として利用して、50代後半~60代を中心とする地域住民を募った。

 「でも、みんなマスクを着用して目もできるだけ合わせないように下を向いている。これは(過去にワークショップを開催した)途上国の女性と似ていた」

 向田さんは「これはまずい」と思い、コミュニケーションを積極的に図った。大きな変化が現れたのは、ある女性がプロのメイク技術によって見違えるような表情に一変してからだった。突如、「私も!」との声が飛び交いはじめた。

 「旦那さんに走って見せに行く人や、はじめは『5分で終わらせて。その後炊き出しに行くんだから』と言っていたのに『やっぱり目も唇もやって』とのめり込んでいく人、いつのまにかその場でお茶を片手にくつろぎ始める人まで出てきた。『炊き出しはいいの?』と聞くと、『いいのよ、きれいになったから』と答えるほどだった」

 基礎化粧品の物資提供を行った第1~2弾の支援活動の際には、被災者とここまでのコミュニケーションは生まれなかったという。これまでネパールやトルコで体験してきた「メイクは人との距離感を縮め、前向きな気持ちの変化を引き出す」との持論が、国境を越えて日本にも存在することを、向田さんは肌で実感することとなった。

 それどころか、海外では通訳が介するコミュニケーションが、日本の場合は女性たちの思いがダイレクトに伝わってくるため、「感慨ひとしおという感じ」で、「活動の原点に立ち返ったような、また、その意義を改めて強く感じられた」体験となったようだ。

心のケアを重点項目に広がり見せる支援活動

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 活動はさらに広がりを見せる。6月15日。4度目はチャリティーコンサートの開催だった。フレグランスメーカーのラルチザンパフューム ジャポンが主催し、開催場所の選定など実務面をコフレ・プロジェクトが担うかたちで実現した。シュウ ウエムラ(日本ロレアル)のメイクアップ商品を利用したワークショップも合わせて実施している。このコンサートは、ソプラノ歌手による歌唱中にその曲に合わせた香りを会場内に漂わせ、被災者の心をリラックスさせることなどを目的に行われた。

 童謡「ふるさと」が会場に響き渡ると、60人ほどの参加者は一斉に号泣しはじめたという。向田さんは、参加者から「長引く避難所生活などで張りつめていた緊張感から開放され、涙を流すことで浄化された気分になった」との声を聞かされ、「こういう芸術的な要素は生きる上での優先順位が低く考えられがちだが、こんなにも人の心を癒すものかと感動させられた」と口にしている。

 「これはすごくいいコラボになった」ことから、アーティストやメーカーからの依頼があれば、類似した企画を積極的に開催していく考えだ。

 現在、被災地の各小売店舗は正常化しつつあるため、向田さんらは化粧品の提供を一端、中断する。その代わりに、「これからはコンサートのように、化粧品を使った心のケアをやっていく」としている。「ニーズがある限り、何度でも行きたい」。コフレ・プロジェクトの被災地支援は、まだまだ続く。

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