カンタンに言うと
普遍性を備えた化粧水づくりが
業界屈指のロングセラーの原点
コーセーの「雪肌精」(せっきせい)は、1985年の発売以来、ロングセラー化が難しいといわれる化粧水ジャンルにおいて着実に愛用者を増やし続け、今年で28年目を迎える化粧品業界屈指の超ロングセラー商品だ。
処方やデザインを一切変えずに、毎年多くの化粧水が登場している中でひと際存在感を放ち続ける要因は何か――。
今回、現在も変わらず愛され続ける理由を探っていくうちに、肌にスッと入っていくような浸透のよさを追い求め、徹底してこだわり抜いたことが、発売から28年経った現在でも通用する処方に辿りついた大きなポイントであることが明らかになった。
開発にあたっては、肌への
浸透スピードに徹底してこだわる
――雪肌精が発売された背景や経緯についてお聞かせください。
立田 雪肌精は1985年に発売したブランドですが、1980年代当時、美白といえばビタミンC誘導体でメラニンを還元する、あるいはビタミンEで血行を促進し、新陳代謝を促すというのが主流でした。
しかし、成分のイメージで訴求するという考えよりも、長く使い続けていただくことで確実に効果を出すということに重きを置いておりましたので、雪肌精の開発にあたっては、肌全体がみずみずしく、血行がよいことが肌の白さや透明感につながるという漢方の考えを取り入れました。
小林禮次郎社長(当時)は理系出身で学会などのさまざまな場所に登壇し、「女性が永遠に求めるものは『シワができない』『白髪にならない』『白い肌でいること』の3つのSだ」と常々語っていたようです。当時は化粧品専門店で競合大手の基礎化粧品がシリーズで購入されるケースが多く、当社はそこに割り込んでいく立場だったので、単品で食い込んでいけるような普遍性を備えた基礎化粧品を開発するようにと禮次郎社長から直々に指示がありました。
雪肌精を発売する1年前には美容液の「活肌精」(かっきせい)、美容クリームの「潤肌精」(じゅんきせい)を発売しました。また、同じタイミングで白髪予防ということで頭皮のヘアエッセンスを発売しています。この1年後に「雪肌精」が誕生したことで、禮次郎社長が常々語っていた「シミには雪肌精、白髪にはヘアエッセンス、シワには活肌精、潤肌精」という提案が実現したのです。
当時の開発担当者は、テクスチャーに関して砂に水が染みこんでいくような浸透の早さにこだわり開発にあたったそうです。これは未だに「雪肌精」の魅力と言われている部分で、雪肌精はとにかく浸透性のよさにこだわりました。
また、内側からうるおいが溢れ出るようにするために、雪肌精ではコットンに含ませたローションパックをその当時、初めて提案しました。
さらに、夏は黒く日やけして秋になったら白くするというのが主流でしたので、日やけした肌は黒くなるだけでなく火照っていました。それをクールダウンするという意味でも、ローションパックは好評でした。
容器パッケージについては、デザイナーが持ちやすさ、握りやすさを配慮し、女性の手首の太さをイメージしてボトルを設計しました。また、漢方発想の化粧水ということから商品名には、古代中国で位の高い人が使用していた漢字(隷書体)を使用しました。
さらに、瑠璃色のボトルを採用しましたが、当時の美白アイテムは透明か白の容器が一般的でしたので、とても個性的でした。そのため、パブリシティなどで多くの取材を受け、他メーカーを含む多くの化粧水の中で瑠璃色のボトルがひと際映えたことが、認知を高める副産物となりました。なお、このボトルは、病院に並ぶガラスの薬瓶から発想を得たようです。中身が白濁色なので容器の青色と重なると、より美しい青が際立ちます。
雪肌精は当初、白肌精(はっきせい)で商標登録して販売する予定でしたが、薬事法の関係で直前になって使用できないと通知を受けました。
開発担当者がどうしたらいいか思案していると、禮次郎社長が「白がだめなら雪がある。雪は白を連想させる」と発案し、雪肌精としてデビューを果たしました。発売が一年遅れたのは、こうした背景があったからです。
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この記事は週刊粧業 2013年8月5日号 8ページ 掲載
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