花王、スキンケアで内因性の角層セラミドプロファイルの変化を確認

花王、スキンケアで内因性の角層セラミドプロファイルの変化を確認
 花王スキンケア研究所・解析科学研究所は、合成疑似セラミドを配合した製剤によるスキンケアにより、アトピー性皮膚炎患者の皮膚の角層の内因性セラミドプロファイルが変化することを確認した。

 これは、日ごろのスキンケアの重要性、アトピー肌に対するスキンケアの新たな作用を見出したもので、同研究成果は、Journal of Investigative Dermatology, February 1, 2020 Online版にて発表している。

 アトピー性皮膚炎は、免疫学的にはアレルゲンに対する高い感受性があり、それに加え、臨床的には皮膚の強い炎症性皮疹と乾燥症状として特徴づけられる。また皮膚表皮の最外層である角層の機能面において、バリア機能、水分保持機能の低下が認められている。

 このような角層機能の低下により、アトピー肌は外部刺激に感受性が高く、一見、症状が寛解(改善・治癒)したように見えても、再発を繰り返しやすく、皮膚にあらわれる強いかゆみや刺激感とあわせて、患者のQOL(Quality of Life)を低下させる。

 そのため、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにおいても、角層機能を正常化することによる症状の軽減や寛解状態の維持のために日常のスキンケアが推奨されている。

 アトピー性皮膚炎の皮膚では、皮疹のない部位でも角層セラミド量の低下が認められており、これが角層機能低下の要因のひとつであることが知られている。また、アトピー肌の角層において、セラミドプロファイルが健常皮膚と異なることが示されている。一方で、アトピー性皮膚炎における角層セラミドプロファイルの変化と角層機能との関連性はほとんど知られていない。

 そこで、同研究ではスキンケアによるアトピー性皮膚炎の角層機能の変化が、内因性セラミドプロファイルに及ぼす影響を調べた。

 皮膚科医が薬物治療を必要としないと診断したアトピー性皮膚炎患者(N=38)からインフォームドコンセントを得て試験を実施した。

 被験者は、保湿成分として合成疑似セラミド(pCer)を配合した試験ローションを1日2回、4週間使用した。期間中は外用・内服の治療薬は使用せず、試験ローション以外のスキンケアも使用しなかった。

 試験期間の前後にテープストリッピング法(粘着テープにより角層を接着・剥離して採取する方法)により前腕部の角層を採取し、試験ローションの連用により角層中に蓄積したpCer、内因性セラミドプロファイルを順相液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレ-イオン化質量分析、角層水分量を皮膚コンダクタンス測定によって調べた。

 試験ローション4週間使用の前後で、内因性の角層セラミドプロファイルに変化があった。具体的には、セラミドNH、セラミドNPの増加、セラミドNS、セラミドASの減少、セラミドNSの炭素鎖長の長鎖化が認められた。これは、アトピー性皮膚炎患者に特徴的なセラミドプロファイルが、健常者のセラミドプロファイルにシフトしていることを意味している。

 また、試験ローションの使用によるpCerの角層への蓄積に関して、pCerの蓄積量が増えるほど、角層水分量が増し(皮膚コンダクタンスが上昇する)、セラミドNSのクラス比率が減少し、セラミドNSの平均総炭素数が上昇する傾向が認められた。

 今回の試験では、アトピー性皮膚炎患者が、合成疑似セラミド(pCer)を含有するローションによるスキンケアを行うことにより、pCerの皮膚角層への浸透のみならず、アトピー性皮膚炎患者が本来保有している内因性の角層セラミドプロファイルが正常化するという大変興味深い試験結果が得られた。

 同社は、今回の試験で得られたアトピー性皮膚炎患者へのスキンケアに関係する知見を、今後の皮膚研究の深化に役立てていく。
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