資生堂は、これまで実現が不可能であると考えられていた「スポンジ相」(界面活性剤の特異な状態を水中で生成)をクレンジングウォーターに活用し、洗浄後の使用感触と洗浄力を高い次元で両立することに成功した。
近年、「ミセラタイプ」と呼ばれる水をベースにしたクレンジングウォーターが多数販売されているが、洗浄後にさっぱりとしてべたつかず、うるおった肌感触が得られる一方で、メーク落とし効果において重要な役割を果たす油性成分をほとんど含まないため、他のクレンジング剤形に比べて洗浄力に課題があった。
しかしながら、水をベースとするメーク落としにおいて「スポンジ相」を活用すると、スポンジ相特有の網目構造により、洗浄後のさっぱりとした肌感触だけでなく、高い洗浄力を発揮することが可能になるという。
同技術は21年6月に日本、7月に海外で発売する「クレ・ド・ポー ボーテ オーミセラーデマキアントヴィサージュ」に活用するとともに、今後の同社のクレンジング製品に展開していく。
一般的に、水をベースとするメーク落としには、「ミセル相」という界面活性剤が集合した会合体が活用されている。
ミセル相は界面活性剤の複数の分子が水中で集合して小さな粒として分散した状態で、メーク落としにおいては洗浄後の優れた肌感触が得られる一方で、メークなどの油性成分になじむ部分はミセル相の内側に限定して存在しているため、洗浄力に課題があった。
今回同社が注目した「スポンジ相」は界面活性剤の分子が網目状に集合し、水を大量に含んだ会合体で、水のように低粘度で透明な外観を有している。
スポンジ相は界面張力が極めて小さいため、洗浄に適した会合体であることは予想されていたが、化粧品処方中でスポンジ相を生成させることのできる組成の範囲がとても狭く、これまで実用化は不可能であると考えられていた。
今回同社はスポンジ相を活用した製剤化とメーク落としに求められる機能の検証を行い、革新的なクレンジングウォーターの製剤化に挑戦した。
試験では、スポンジ相を活用した製剤と従来技術を活用した製剤をコットンにそれぞれ同じ量をしみ込ませた後、白色の人工皮革に塗布したファンデーションを複数回拭き取り、メークの落ちを観察した。
その結果、従来技術を活用した製剤では一部のメークが残っているのに対し、スポンジ相を活用した製剤ではほぼ完全にメークを除去することができていた。
続いて、クレンジング後の肌の感触について、スポンジ相を活用した製剤を、従来技術を活用した製剤と比較した。
20代~30代の女性100名に対し、「従来技術活用製剤と比較した使用性」や「クレンジング後の肌の状態」について評価してもらった結果、いずれの項目においてもスポンジ相活用製剤は良好な評価が得られた。
特に、「さっぱりとしてべたつきがない」というクレンジングウォーターにとって重要な使用性の項目だけでなく、「肌が明るくなった」「くすみが取れた」という点でも従来品を上回った。これは製剤中のスポンジ相が油と混ざりやすいことや細かい部分への浸透性が高いことなどの性質を持つことによって肌上の不要な角層も除去されたためと考えられる。