資生堂、老化の伝播引き起こす真皮老化細胞モデルの開発に成功

粧業日報 2022年8月2日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 再生医療研究の知見を活かした肌老化の根本原因解明へ
資生堂、老化の伝播引き起こす真皮老化細胞モデルの開発に成功
 資生堂は、再生医療研究の知見を活用し、老化細胞から分泌されるSASP因子等を介して周囲の細胞に老化を連鎖させる特徴を持つ「真皮老化細胞モデル」の開発に成功した。

 これにより、これまで困難とされてきた老化細胞とその周囲の細胞の様子、SASP因子が及ぼす影響について、安定的に詳細な観察をすることが可能になった。この「真皮老化細胞モデル」を活用し、老化現象の解明に重要なSASP因子と皮膚老化の関係性をより詳細に研究していく。

 また、開発した「真皮老化細胞モデル」を用いて、ニーム葉抽出液がSASP因子分泌の制御に関わるNFκB産生を抑制することを確認した。研究成果の一部は「日本組織培養学会 第94回大会」(7月8日開催)にて発表している。

 今後は、最先端の再生医療技術の知見を活かし、細胞単体の老化だけではなく、周囲の細胞に及ぼす影響についても明らかにすることのできる細胞モデルを構築し、皮膚内部で起こる老化現象を解明することで、老化に根本からアプローチする革新的な価値を創出していく。

 皮膚老化に関する研究に長年取り組む同社では、真皮幹細胞が見た目の老化を改善する仕組みや、免疫細胞が皮膚内の老化細胞を排除する仕組みなど、多岐にわたり皮膚の抗老化機構の解明を行ってきたが、研究に必要となる老化細胞は、皮膚組織から取り出しても増殖性が低く、入手が困難であることから、実験に用いるためには時間と工夫が必要だった。

 そこで今回は、老化細胞を再現すべく、2013年から本格的に取り組んできた再生医療研究の知見を活用し、生体内に近い性質をもつ「真皮老化細胞モデル」の開発を目指した。

 生体には、自然に体内から老化細胞を除去する仕組みが備わっているが、加齢などにより除去機能が衰えると老化細胞は体内に蓄積され、SASP因子等を分泌して慢性炎症やコラーゲンの分解などを引き起こすことが知られている。

 今回開発に成功した「真皮老化細胞モデル」は、細胞サイズの肥大化、細胞増殖の停止、老化マーカーの検出といった老化細胞の特性が再現されており、炎症性サイトカインを中心とした複数のSASP因子の発現も確認している。また、細胞増殖性を停止した状態で長期培養することができるため、三次元皮膚モデルなど、幅広く応用できるという。

 続いて、皮膚内で老化の連鎖を引き起こす原因であるSASP因子を分泌する真皮老化細胞モデルを用いて、SASP因子の分泌を制御しているNFκBの機能を抑える薬剤の有用性検証を行った。

 その結果、センダン科植物の一種であるニーム葉抽出液が、NFκBの遺伝子発現を抑える効果があることを確認した。
ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 資生堂、老化の伝播引き起こす真皮老化細胞モデルの開発に成功

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop