資生堂、ミトコンドリア代謝抑制による表皮幹細胞の活性化を解明

粧業日報 2023年5月26日号 2ページ

資生堂、ミトコンドリア代謝抑制による表皮幹細胞の活性化を解明
 資生堂は、細胞のエネルギーを作り出す働きをしているミトコンドリアのATP産生を制御するMPC1を抑制することによって、ヒトの表皮幹細胞が増加することを明らかにした。さらに、タモギタケエキスが表皮細胞のMPC1発現を抑制し、表皮幹細胞の活性化に働くことを発見した。

 これらの結果は、幹細胞に一時的にエネルギー産生が低い休息状態を与えることで活性を促し、表皮細胞全体が良好な状態になるという、幹細胞を介した新たな美肌へのアプローチの可能性を示している。同研究は、R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、10年にわたる同社幹細胞研究の最新知見として生み出された。肌を根本的に生まれ変わらせることができるようになる未来に向け、同社では幹細胞の研究を今後も進化させる。

 皮ふのターンオーバーは、表皮の細胞が絶えず増殖・分化することで起こり、健やかな肌の維持に役立っている。その細胞の供給源となるのが、表皮の最も深い部位である基底層に存在する表皮幹細胞だ。同社はこれまで、表皮幹細胞を健やかに保つことが若々しい肌の実現にとって非常に重要であると考え、10年にわたって表皮幹細胞研究に取り組んできた。その結果、表皮の基底層の下に存在する基底膜を介して表皮幹細胞の維持をサポートすることで、肌の保湿やバリア機能、真皮のコラーゲン産生にも寄与することを発見してきた。

 一方で、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞したiPS細胞技術など、表皮幹細胞に限らず生体内の幹細胞は健康や医療の分野で重要な対象であることから研究が進んでいる。昨今、生体内の幹細胞では、細胞のエネルギーを作り出す器官であるミトコンドリアの活性が低いことが明らかになり、低エネルギー状態になることで幹細胞が活性化されることが科学的に証明され話題となっている。そこで、同社は表皮幹細胞においても、低エネルギー状態を作り出すことで細胞を活性化できるのではないかと考え、研究に取り組んだ。

 今回は、ミトコンドリアにエネルギー産生の材料となるピルビン酸を供給するタンパク質「MPC1」に着目し、表皮幹細胞への影響を解析した。培養細胞にMPC1の阻害剤を加えてミトコンドリアの活性を抑制すると、表皮幹細胞マーカーであるMCSPの遺伝子発現が増加することや、遺伝子だけではなく表皮幹細胞そのものが増加することを明らかにした。また、培養皮ふ組織にMPC1阻害剤を塗布することで、皮ふ中の表皮幹細胞が増加することも明らかになった。このことから、ミトコンドリア活性を一時的に抑制することで表皮幹細胞を活性化できると考えられる。

 「表皮幹細胞においても、細胞のエネルギー産生を一時的に抑えて、休息状態を与えることで細胞が活性化し、結果として表皮細胞全体が良好な状態になる可能性が示された。これは細胞の内側(ミトコンドリア)から幹細胞をコントロールするという新しい美肌へのアプローチであり、今後も表皮幹細胞研究を進化させ、エイジングによるさまざまな肌悩みへの対応を実現していく」(同社)
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