コーセー、心身の機能を高めるキンコウボク花エキスを開発

粧業日報 2023年7月6日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 世界的な植物研究機関と共同研究、スキンケアや香料商品の開発に応用
コーセー、心身の機能を高めるキンコウボク花エキスを開発
 コーセーは、世界でも有数の規模を誇る植物研究機関である「中国科学院華南植物園(華南国家植物園)」との共同研究により、肌のバリア機能を高めるキンコウボク花エキスを開発した。また、キンコウボクの花の香りにはポジティブな気持ちを高める効果があることを見出した。

 研究成果の一部は、2022年3月に開催された第142回日本薬学会(名古屋)、22年11月に開催された第66回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(沖縄)にて発表している。

 同社では植物由来成分の肌への効能を研究し、化粧品に応用し続ける一環として、希少な植物や100万点以上の植物標本を有する同植物園と2018年よりパートナーシップを結び、化粧品分野への植物資源の応用を目指した共同研究を開始した。数ある植物の中でも注目したのがキンコウボクで、その花は高貴な香りであることが知られていたものの、30mを超える高木に成長するため新鮮な花を得ることは難しく、含有成分や薬理作用はほとんど解明されていなかった。

 そこで、同植物園にてキンコウボクを低木の状態で栽培・管理する体制を確立することで、新鮮な花を安定的に収穫することが可能になり、含有成分やその作用に対する研究、化粧品原料としての開発を進められるようになった。

 研究を進める中で、開発したキンコウボク花エキスには肌バリア機能として重要な細胞間構造であるタイトジャンクションバリアの形成促進効果があることを発見した。

 また、香りの化学分析やその心理的影響を評価したところ、その花の香りにはポジティブな気持ちを高める効果があることを見出し、キンコウボクは肌と心の両面で有用であることがわかった。

 今回開発したキンコウボク花エキスをヒト表皮モデルに添加したところ、肌バリア能の指標である電気抵抗値が上昇し、さらにタイトジャンクション(肌内部の細胞と細胞の間を隙間なく塞ぐ肌のバリア構造。乾燥から肌を守り、花粉や細菌などの外部環境からの肌への異物侵入を防ぐ役割がある)を可視化した蛍光観察像ではエキスを添加していない対象ではタイトジャンクションの形成が不十分な部分が散見されたが、エキスを添加した対象では全体的に形成促進されている様子が観察された。このことから、キンコウボク花エキスはタイトジャンクションバリアの形成促進作用を有し、肌バリア機能を向上させることが明らかになった。

 高貴な香りとして知られていたキンコウボクの花の香りについても、開花段階ごとに詳細な研究を行った。開花段階を4段階に分類して香気成分を採取し、成分の化学分析・香りの特徴評価を行ったところ、開花段階ごとに香気成分が異なることを確認した。特に咲き始めの段階は、フレッシュなグリーンフローラル調なキンコウボクの香りの特徴が最もよく表れている、バランスの良い香りであることがわかった。

 次に各開花段階の香りを再現した香料を用いて、38名の実験参加者を対象に香りによる心理状態への影響を評価した。香りの吸入前後で、総合的な感情(肯定的、否定的など)を測定する「一般感情尺度」に回答してもらったところ、咲き始めの香りを吸入したときの肯定的な感情(活気のある、楽しい、充実したなど)のスコアが有意に上昇することを確認した。このことから、キンコウボクの花の咲き始めの香りには、ポジティブな気持ちを高める心理的効果があると考えられた。

 以上により、キンコウボクは肌と心の両面から健やかな生活を支える有用な素材となり得ることが判明したことから、心身ともに健やかになれるウェルビーイング発想による研究を進め、スキンケアや香料商品の開発に応用していく。
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