コーセー、美容習慣に伴うまつ毛のダメージ現象を解明

粧業日報 2024年1月19日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 内部タンパク質の流出に対し、補修成分の効果を確認
コーセー、美容習慣に伴うまつ毛のダメージ現象を解明
 コーセーは、美容室向けヘアケア・化粧品メーカーのミルボンと共同で、まつ毛のダメージ現象を捉える研究に取り組み、美容習慣に伴うダメージとして、まつ毛内部のタンパク質が流出することを見出した。さらに、そのようなまつ毛に対する補修成分の効果を確認した。

 研究成果については「2023年 繊維学会研究発表会」にて「化学的・物理的処理に伴うまつ毛の特性変化」というタイトルで発表している。

 まつ毛は目元の印象を大きく左右することから、長く、太く見せる需要は高く、まつ毛専用の美容液等が多く販売されている。また、まつ毛を上向きにカールさせるために、アイラッシュカーラーを用いてまつ毛を物理的に変形させる化粧法が一般化しており、化学的処理によってまつ毛をカールセットする手法も存在する。

 これらの手法は少なからずまつ毛に負担をかけることが予想されるが、これまでその影響についての詳細な研究はあまり行われていなかった。しかしながら、美しく健やかなまつ毛を保ち、上向きにカールさせたまつ毛で華やかな目元の印象を楽しみ続けるには、美容習慣に伴って生じるまつ毛のダメージを詳細に捉え、適切なケア方法を確立する必要があると同社では考えた。

 そこで今回は、まつ毛を上向きにカールさせるための物理的・化学的手法が、まつ毛に与えるダメージについての研究に着手した。世の中に先駆けた研究開発で新しい化粧品を生み出し続けるコーセーと、美容室専売メーカーとして毛髪研究に長年取り組むミルボンが互いの研究領域の強みを活かすことで、ダメージ現象の解明と、適切なケアを行うための補修成分の選定に取り組んだ。

 その結果、1つ目の成果として「物理的・化学的カールによるキューティクルの損傷」を確認した。研究では物理的・化学的にカールさせる手法がまつ毛に与える影響を調べるため、電子顕微鏡での観察を行った。その結果、繊維形状の変形や表面のキューティクル損傷が見られ、特に化学的カール履歴あり群ではキューティクル損傷が顕著だった。

 2つ目の成果として「化学的カール履歴あり群では、まつ毛のタンパク質が流出していること」を確認した。電子顕微鏡での観察で特に損傷の激しかった化学的カール履歴あり群のまつ毛では、表面のキューティクルだけでなく、まつ毛内部にまで影響を生じているのではないかと考え、まつ毛内部のタンパク質の状態を顕微FT-IR法によって調べたところ、化学的カール履歴あり群のまつ毛ではタンパク質量が少なくなっていることがわかり、タンパク質がまつ毛の外に流出していることが示された。またその結果について、大型放射光施設SPring-8のBL43IRを用いた詳細な可視化を行うことでも確認した。

 3つ目の成果として「まつ毛に対する補修成分の効果」を確認した。内部タンパク質の流出に対応するため、補修成分の検討を行い、化学的処理と洗浄処理を行ったダメージまつ毛に対し、タンパク質の材料であるアミノ酸から作られ浸透性に優れた成分ジラウロイルグルタミン酸リシンNaを1,3-ブチレングリコールとともに作用させたところ、成分がまつ毛内部にまで浸透したことを示す結果が得られた。

 また、補修成分を作用させたまつ毛ではアミド結合に由来するピークの強度が向上しており、アミド結合を有するジラウロイルグルタミン酸リシンNa等の成分がまつ毛内部に浸透していることが示された。

 今回の研究成果を踏まえ、まつ毛を上向きにカールさせる際のダメージを補修し、長さや太さだけでなく、理想のまつ毛デザインを楽しみ続けられる製品の開発につなげていく。
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