花王、多数の皮膚毛細血管を一度に可視化・定量化する技術を開発

粧業日報 2024年1月26日号 4ページ

花王、多数の皮膚毛細血管を一度に可視化・定量化する技術を開発
 花王は、広視野で多数の皮膚毛細血管を撮影し、深層学習を用いて毛細血管の数や面積を算出する技術を開発した。さらに、この技術を用いて、実際の肌における毛細血管の個人差や部位差、刺激への応答性の違いを確認することができた。

 この成果は今後、肌や肌にあらわれる健康状態の把握、毛細血管の反応を考慮した製品の開発・提案につなげていく。

 皮膚毛細血管の状態は生活習慣や疾患により変わることが知られており、体の外側から観察が可能なため、花王はその評価が肌や全身の健康状態の把握に利用できるのではと考え、研究を進めている。

 毛細血管は毛髪の10分の1程度と非常に細いため顕微鏡で観察することが一般的だが、高倍率で拡大すると視野内の毛細血管数は限られてしまう一方で、毛細血管の形や内部の血流状態はばらつきが大きいため、評価の観点ではある程度の数を一度に捉える必要がある。

 そこで今回は、広い視野と微細な構造を捉えられる解像度を両立し、一度に多数の皮膚毛細血管を撮影できる装置の開発に取り組んだ。さらに、得られた画像から皮膚毛細血管を検出し定量化する解析方法も検討した。

 広い視野と微細構造を捉えられる解像度を両立するには、画素数の大きい画像を撮影できることが重要なことから、4K画質(3840×2160画素)よりも高画素数(4000×3000画素)のカメラに最適なレンズや照明を組み合わせた。また、毛細血管自体は透明なので、位置や構造を観察するには血管内に流れる血液を目印にする必要があるが、毛細血管の血流は断続的で常に血液が充満しているわけではないため、ある時点の画像1枚では全貌を捉えることはできない。

 そこで、動画で同じ場所を撮影し、その画像を重ね合わせることで血流の軌跡から毛細血管領域がつながった画像を得ることを目指した。なおデバイス本体は、肌に押し当てて撮影することが容易なハンドヘルド型とした。

 毛細血管の状態と肌や組織の状態の関係を調べるためには、画像から血管の数や面積などを適切に算出し定量化する必要がある。そこで、深層学習を用いて、画像から毛髪やシミなどを不要な要素として区別し、膨大な数の毛細血管を自動的に検出する人工知能を作成した。

 撮影した2つの画像例について、手動で毛細血管領域を白く塗った画像と深層学習による自動抽出画像を比較した結果、毛細血管を検出できていることが確認できた。これにより、1000本以上の毛細血管の数や面積を自動的に算出・定量化することが可能となった。

 開発したデバイスで4名の前腕内側部を撮影し毛細血管数を算出した結果、同じ人でも数cm離れた場所では値が異なること、部位ごとの平均値は人によって異なることがわかった。

 また、テープで4名の前腕内側部7カ所で角層を数回剥離し、軽微な炎症に似た状態を作った前後を比較すると、毛細血管の数や面積が変化すること、その変化は人により異なることが確認できた。これは、同じ環境変化に対する血流の応答が人によって異なる可能性を示しており、同じ刺激で肌状態が悪化・改善する人の違いや、スキンケアの効果の違いなどの理解につながると考える。

 今回、従来よりも膨大な数の皮膚毛細血管を撮影し、深層学習により数や面積を自動的に算出する画像解析技術を開発した。

 今後、この方法を用いて人や部位ごとの皮膚毛細血管を評価し、肌や健康状態、製品使用後の変化との関係を調べることで、最適なスキンケアやヘルスケアなどの提案ができるようになることが期待される。
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