資生堂、表皮幹細胞研究を進化

粧業日報 2024年5月24日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 老化を抑制し細胞量を増加させるレモンアイアンウッド葉エキスを発見
資生堂、表皮幹細胞研究を進化

 資生堂は、レモンアイアンウッド葉エキスに、表皮幹細胞の老化を抑制する効果があることを発見した。さらに同エキスに、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生み出す力を向上させる効果も見出した。これにより、肌のターンオーバーの源となる表皮幹細胞を健やかに保ち、エイジングによる肌悩みの解決につながる可能性が示唆された。

 この研究は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)との共同研究により表皮幹細胞の老化制御の可能性を明らかにした知見を応用したもの。今後も、表皮幹細胞研究を進化させ、エイジングによる様々な肌悩みへのアプローチを目指す。

 肌のターンオーバーは、表皮の細胞が絶えず増殖・分化することで起こり、健やかな肌の維持に役立っている。その細胞の供給源となるのが、基底層に存在する表皮幹細胞で、同社はこれまで表皮幹細胞を健やかに保つことが美しい肌の実現にとって非常に重要と考え、表皮の基底層の下にある基底膜を介して表皮幹細胞の量の維持をサポートすることにより、肌の保湿やバリア機能、さらに真皮のコラーゲン産生にも寄与することを発見してきた。

 さらに、表皮幹細胞の量だけではなく表皮幹細胞の質に着目し、CBRCとの共同研究で表皮幹細胞の老化を抑制するRNA結合タンパク質YBX1がリン酸化により機能低下し、細胞老化を引き起こすことを明らかにした。研究では、これまでの知見を応用し、化粧品原料での表皮幹細胞の質の向上の実現を目指した。

 表皮幹細胞の老化を抑制するYBX1は、リン酸化により機能が低下することが確認されている。今回、100種類以上の化粧品原料の中から、オーストラリア原産の植物、レモンアイアンウッドから抽出したレモンアイアンウッド葉エキスが、表皮幹細胞を含む培養細胞において、YBX1のリン酸化を抑え、表皮幹細胞の老化を抑制することを見出した。

 また、YBX1が表皮幹細胞の老化を防ぐメカニズムとしては、老化した細胞から分泌されて老化の伝播を引き起こすSASP因子の産生を抑制することが知られているが、研究ではレモンアイアンウッド葉エキスを添加した培養細胞で、SASP因子の1つであるIL-8の産生が抑えられていることがわかった。

 加えて、レモンアイアンウッド葉エキスにより、表皮幹細胞のマーカー遺伝子であるMCSPの発現が増加し、細胞の増殖性も向上した。このことから、レモンアイアンウッド葉エキスは表皮幹細胞の老化を抑制する効果を持つとともに、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生み出す力を向上させる効果があることが示唆された。

 この知見を、肌のターンオーバーの源である表皮幹細胞を健やかに保つソリューションとして応用し、エイジングによる様々な肌悩みにアプローチしていく。

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