粧業日報 2024年5月28日号 2ページ
カンタンに言うと
コーセーは、乾燥などから肌を守る肌バリアの機能低下が、細胞間脂質の主要構成成分の1つであるセラミドが形態変化した「悪玉セラミド」によって生じることを発見した。この悪玉化は肌バリアの一部である角層の細胞間脂質から遊離脂肪酸が脱離することでセラミドの分子形態が変化し、細胞間脂質の充填構造(分子の詰まり具合)が低密度になることで起こる。
この低密度な領域はバリア機能が低く、乾燥しやすい「うるおいのすき間」といえる。また、この悪玉化の発端となる遊離脂肪酸の脱離はアセチルアミノ酸によって抑制できることを見出した。研究成果の一部は、第16回セラミド研究会学術集会(2023年11月15~17日、石川県)にて発表した。
肌のバリア機能は、花粉などのアレルゲンや病原性微生物といった有害物質が体内に侵入することを防ぐとともに、肌内部からの水分蒸散を防ぐことでうるおいを保つ重要な役割を担う。中でも角層の細胞間脂質は肌の最表面である角層の細胞間を埋めることでその一翼を担う大切な要素だ。例えば、アトピー性皮膚炎の患者は肌バリア機能が低下しているが、健常者と比べて細胞間脂質の充填密度が低いことが知られている。
一方、肌バリア機能の低下は健常者においても普段の洗顔などで日常的に起こりうる現象であり、同社ではバリア機能低下と細胞間脂質の充填構造の関係に着目した研究を進めてきた。既に赤外分光法を用いることで、細胞間脂質の充填密度を可視化することに成功しており、肌の中で密度が高い領域と低い領域が存在していることを確認している。この低密度の領域は、バリア機能が低く、乾燥が起きやすい「うるおいのすき間」といえるが、なぜこのすき間が生じるかは解明されていなかった。そこで研究ではこの原因解明とその対応策について探求した。
具体的には、細胞間脂質の充填構造と構成成分の関係を調査した。主要構成成分であるセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸の割合を変化させた細胞間脂質モデルを複数作製し、各モデルの充填構造をX線小角・広角散乱測定により解析した。その結果、遊離脂肪酸の割合が高いモデルでは高密度な充填構造を示すシグナルが検出され、一方割合の低いモデルでは高密度な充填構造は検出されなかった。このことから、遊離脂肪酸の存在が高密度な充填構造に大きく関与していることがわかった。
また、これらの脂質モデルは構成成分の割合に関わらず、ラメラ構造という水と油の層が連なった周期構造を形成し、低密度な充填構造の方がこの周期が短いことがわかった。このラメラ構造の周期に最も関連が深い構成成分はセラミドであり、周囲の環境によって分子の形態を変えうることが知られている。そのため、遊離脂肪酸が不足することでセラミドが形態変化した「悪玉セラミド」となり、それにより細胞間脂質の充填構造の密度が低下し、「うるおいのすき間」の形成や肌バリア機能の低下につながったと考えられる。
次に「悪玉セラミド」への対応策の探索を行った。細胞間脂質の密度を維持・増加させる成分の候補として、角層のNMF成分(天然保湿因子)に着目し、複数のアミノ酸・アミノ酸誘導体を検討したところ、アセチルアミノ酸に効果を見出した。ヒト由来の角層シートにアセチルアミノ酸を60分間作用させることで、低密度な充填構造の減少が確認された。これはアセチルアミノ酸が有する負電荷とイオン化した遊離脂肪酸との間に電気的な反発力が働き、細胞間脂質からの遊離脂肪酸の脱離を抑制できたためと考えられる。
これにより、アセチルアミノ酸は「悪玉セラミド」発生の発端となる遊離脂肪酸の脱離を抑制できる肌バリア機能の維持に有用な成分であることが確認できた。
以上のことから、肌バリア機能の低下の一因は形態変化した「悪玉セラミド」にあることがわかった。また、この悪玉化のトリガーとなる遊離脂肪酸の脱離はアセチルアミノ酸によって抑制できることも確認できた。この知見は今後のスキンケア製品に応用していく。これからも、新たなアプローチにつながる基盤研究や顧客の肌悩みに応えることができる製品への応用研究を推進していく。
この記事は粧業日報 2024年5月28日号 2ページ 掲載
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