【週刊粧業2017年3月13日号4面にて掲載】
今回取り上げるキーワードは『女性ホルモン』です。
加齢による女性ホルモンの減少や、不規則な生活やストレスなどによるホルモンバランスの乱れが、動悸や発汗、ほてり、疲労、イライラなど心身に様々なトラブルを引き起こすことはよく知られています。
中でも、月経周期が不規則になる頃から閉経までの更年期(45~55歳前後)においては、女性ホルモン量が急減するため、その症状はいっそう深刻なものとなります。
2014年に大塚製薬が主体となって立ち上げた『ホルモンケア推進プロジェクト』の調査によれば、更年期障害により昇進を辞退したことがあると答えた人は実に半数にのぼります。
また、仕事を辞めた人は17%、辞めようと悩んだことがある人は19%となっており、更年期障害が女性のライフステージに大きな影響を及ぼしていることが窺えます。
そこで近年、こうした女性ホルモンの減少や乱れに悩む女性をサポートしようと、様々な取り組みや対策商品がみられるようになってきました。
例えば、先ほどの『ホルモンケア推進プロジェクト』では、女性が活躍できる社会の実現を目指し、男女ともに理解を深めるための啓発活動を企業や学校などで積極的に行っています。
■化粧品業界の動き
化粧品業界においても近年、女性ホルモンが肌荒れやニキビをはじめ、テカリやたるみなどとも深く関連している点に着目し、新商品が次々と登場しています。
例えば、更年期障害の市販薬「命の母」を手掛ける小林製薬では、「肌にも更年期がある」ことをコンセプトにした化粧品を発売しています。また、ポーラも40~50代女性をターゲットに、肌に影響を与える二大ホルモン(女性ホルモンと成長ホルモン)に着目したブランド「アリュー」を導入しています。
こうした相次ぐ新商品の発売の背景には、更年期の女性が化粧人口のボリュームゾーンを占めていることが挙げられ、各社は取り込みを強化する狙いがあります。
もうひとつ、参入メーカーが口を揃えて指摘するのが、「更年期」のイメージが変化してきている点です。5年ほど前まで「更年期」は「つらい」「仕方がない」などネガティブな言葉とともに語られてきましたが、近年はそうしたイメージはだいぶ払拭されてきました。
このため化粧品においても、更年期特有の肌トラブルや不安をあおるのではなく、女性の各ライフステージに寄り沿ったポジティブな化粧品として打ち出しています。
また、これらの化粧品は、肌の「くすみ」や「血色感」、「キメの乱れ」など、肌全体の印象を土台から整えようとする昨今のスキンケアのトレンドとうまくマッチしています。
このため今後、エイジングケア市場の拡大と相俟りながら、需要をさらに獲得していく見通しです。