第7回 サステナブル化粧品認証による新しいマーケティング・ブランディング戦略への可能性

【週刊粧業2024年3月25日号4面にて掲載】

 第4回「クリーンビューティーの分野で進むEU規制」でも述べた欧州委員会の規制で、今後グリーンウォッシュ回避のエビデンス提示が求められる。そのエビデンスが「認証」になるといわれているのだが、認証は国によって大きく認識や認知度が異なり、特に日本国内では遅れが目立っている。

 化粧品のサステナビリティ研究のために行った消費者向け調査(2022年/n=537)によると、認証自体の認知度が非常に低いことがわかってきた。調査は生物多様性との関わりでの研究によるもので(研究の内容は福井大学共同論文を参照)、国内主流の有機JASや化粧品産業においてもメジャーになりつつあるRSPO認証を見せ、それぞれ聞いたものである。

 食品でも馴染みのある有機JAS認証の認知度は全体の約37%、パーム油のRSPO認証はたったの10%程度だった。また、国内消費者においては、認証で製品を選択するという慣習も少ないことがわかった。国内は特に大きく消費者主義に寄るところがあり、認証取得コストなどを危惧して取得・維持をしない企業もある。

 また、特に化粧品ではオーガニックなど明確な定義がないことから、認証だけがすべてではないというように、それにならう小売業もあり、認証の重要性があまり伝わることが少ない。

 米国では、日本よりはまだ理解が進んでいるものの、認証で選ぶ消費者はおおよそ全体の半数程度という。欧州では、初めから認証の重要性が普及されていることから、オーガニック産業(農業など)に還元されている。

 欧州ではそもそも、産業の中心の「環境」があるため、それらを明確にアピールする認証は、サステナブル製品には必須となっている。同じように、欧州の消費者も、環境配慮製品を求めるため、認証を正しく理解して商品選定し、認証に沿った使用・廃棄まで積極的に進める。

 日本は、多くの原料および製品を海外に頼っており、化粧品では全体の約90%、海外製品が流通しているということは言うまでもない。輸入ブランドの場合、本国の戦略に合わせてアピールされることが本来ではあるが、日本では認証の認知度が低いからといって認証アピールが薄くなると、一向に認証が普及されず、サステナビリティの意識が向上しにくいだろう。

 認証普及といえば、いくつかの企業でRSPO認証については普及等をしている企業もあるが、サステナブル化粧品認証には、このほかに海外の有機農業認証や森林認証などが多くある。しかし、国内の一般消費者では、せっかくFSC認証などが貼られた紙パッケージでさえ、十分に資源回収されていない現状がある。

 認証をしっかりアピールすることは、欧州を例にとると、マーケティングやブランディングにつながる。今後の規制対策を見据えて、認証普及に向けての教育は、企業でも積極的に行うことが必要である。
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長井美有紀

日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事

化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。

https://sustainable-cosme.org/

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